ASEAN全体のデジタル貿易ルールの形成進む

(ASEAN)

バンコク発

2019年05月28日

ASEANでは2016年以降、デジタル貿易に関するルール形成が進んできた。ただ、電子商取引協定を除き、個人情報保護やデータガバナンスに関する取り決めは法的拘束力がなく、一層の規律整備が求められている。

ASEAN個人情報保護枠組み

ASEAN個人情報保護枠組みは、域内外の貿易および情報流通の促進・成長に貢献する観点から、個人情報保護を強化し、ASEAN各国の協力を円滑化することを目的に、2016年11月に採択された枠組みPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)だ。所管は各国情報通信関連省庁で構成されるASEAN情報通信相会合(TELMIN)で、基本原則として(1)個人情報の収集・利用・公開に当たっての同意・通知・明確な目的の必要性、(2)個人情報の正確性・完全性の担保、(3)個人情報の取り扱いに際しての安全性の確保、(4)情報アクセス・修正要求の受け入れ、(5)他国・地域への個人情報の移転に当たっての条件(同意、もしくは情報移転先が記載原則と一貫性のある個人情報保護を受けられることを担保する必要なステップを取ること)、(6)個人情報が法的・ビジネス目的上で不要になった際の速やかな消去、(7)情報収集主体の責任、の7つを確認している(第6条)。

なお、枠組みでは、各国の法令に基づき、当該原則の促進・実施に当たる協力を行うよう努力することが定められている(第3条)一方、会合参加者の意思の記録に過ぎず、何ら法的義務を構成するものでなく(第2条)、また6カ月前の書面での通知により、自由に枠組みから脱退することができる(第16条)とされており、合意文書としては非常に弱いものとなっている。

ASEANデジタルデータガバナンス枠組み

ASEANデジタルデータガバナンス枠組みは、2018年12月のASEAN情報通信相会合(TELMIN)で採択をされた枠組みPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)だ。域内データエコシステムの強化、法規制枠組みの調和、データイノベーションの促進を目的に、サイバーセキュリティー、能力開発、実施協力の推進を通じて、4つの戦略優先分野への取り組みを整理している(添付資料参照)。他方、個人情報保護枠組みと同様、これらの取り組みについては非拘束的でASEAN各国の国際法・国内法の下での何の権利・義務も構成しないものとされている(第34条)。

ASEAN域内の物品貿易・投資・サービス貿易の主要協定に続く、電子商取引分野の協定PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、ASEAN電子商取引協定として、2019年3月に署名が行われた(2018年11月26日記事参照)。

(蒲田亮平)

(ASEAN)

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