メキシコ政府と産業界、米国の鉄鋼・アルミへの追加関税撤廃を歓迎

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2019年05月20日

メキシコ政府は5月17日、米国・メキシコ・カナダ間での合意により、米国政府が通商拡大法232条(以下、232条)に基づきメキシコとカナダ製の鉄鋼とアルミニウムに課していた、追加関税25%の撤廃決定を歓迎した。メキシコ経済省の同日付プレスリリースによると、2018年12月1日のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)政権発足から、グラシエラ・マルケス経済相は幾度となく米国通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表やウィルバー・ロス商務長官と会合を持ち、追加関税の撤廃を求めてきた。当初は、米国側から追加関税撤廃の代わりとして輸出数量枠の設定を要求されたが、メキシコは同枠を断固反対し、数量制限ではなく輸出価格などの監視徹底で合意に達したようだ。今後、第三国の鉄鋼やアルミがメキシコを経由し米国市場に流入することを防ぐため、両国間での情報交換を密に行う。

メキシコ経済省は「競争力のある北米(米国、メキシコ、カナダ)の生産統合を確保する必要性を再確認し、今回の合意が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の批准に向けた道のりをより平たんなものにする」と強調した。

全国鉄鋼産業会議所(CANACERO)はフェイスブックとツイッターで、「マルケス経済相とヘスス・セアデ外務省次官(北米担当)の尽力により、232条の追加関税撤廃が決まったことに祝意を表す。鉄鋼産業にとって非常に有益で、USMCAの批准に向けた大きな一歩だ。北米地域の自由で公正な貿易は、北米の競争力を強化することにつながる」とコメントした。全国アルミニウム産業会議所(CANALUM)のラモン・ベルトラン会頭もツイッターで、「3つの偉大な国の関係をより良くする今回の合意に向けた努力をたたえ感謝する」とコメントした。

メキシコの対米報復関税も撤廃へ

メキシコ政府は232条に基づく追加関税への対抗措置として、2018年6月5日から米国産品71品目に対し、北米自由貿易協定(NAFTA)第802条6項に基づき報復関税を適用している(2018年6月6日記事参照)。今回の合意を受け、メキシコ製の鉄鋼、アルミニウムに対する米国の追加関税が撤廃される日に、メキシコが課している報復関税も撤廃されることになる。報復関税対象品目の中には、メキシコ進出日系企業が米国から調達しているものも一部あるため、同品目を輸入している企業にとっては朗報となる。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

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