第1四半期のGDP成長率は4.5%、農業が回復するもやや減速

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年05月31日

マレーシア中央銀行と統計局は5月16日、2019年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率を前年同期比4.5%と発表した(表1参照)。前期の4.7%からやや減速した。

表1 需要項目別実質GDP成長率〔前年(同期)比〕の推移

個人消費が引き続き、経済を下支え

GDPを需要項目別にみると、全体の約6割を占める個人消費が前期の8.4%増から7.6%増に減速したものの、引き続き経済成長を牽引した。中銀によると、2018年6~8月のタックスホリデー(GSTの免税措置)期間に発生した駆け込み需要の影響で、前年は消費が押し上げられたが、当期は消費の正常化を反映したものだという。

他方、民間投資は米中貿易摩擦などの世界経済を取り巻く不確実性や、マレーシア国内の不動産不況などが要因となり、前期の5.8%増から0.4%増に急減速した。政府消費は物品・サービスの支出増で6.3%増に拡大した一方、公共投資は中央政府や政府関連企業の資本支出削減で13.2%減となり、6期連続で縮小した(図参照)。

図 実質GDP成長率(前年同期比)と項目別寄与度の推移

農業がプラス成長に転じる

産業別では、GDPの56.7%を占めるサービス業と22.4%を占める製造業がそれぞれ前期比0.5ポイント減速したが、6.4%増、4.2%増と引き続き堅調な成長をみせた(表2参照)。農業は長引く悪天候による不調から好転し、前期の0.1%減から5.6%増へとプラスに転じた。他方、鉱業・採石は2.1%減と不振だった。東マレーシアでのパイプライン破損は復旧に向かっている一方で、石油やガス施設の閉鎖が影響したものとみられる。

表2 産業別GDP成長率〔前年(同期)比〕の推移

政策金利の引き下げで景気刺激を狙う

2019年通年の経済成長見通しについて、ノル・シャムシア中銀総裁は3月に発表した4.3~4.8%の予測を維持し、通年のインフレ率を0.7~1.7%と予測した。2019年第1四半期のインフレ率は、前年同期比0.3%減とマイナスに転じた。また、バンク・イスラムのチーフ・エコノミストのモハマド・アフザニザム氏によると、中銀が5月8日に翌日物政策金利(OPR)を3.25%から3.00%に引き下げたことや、4月に発表されたマレーシア東海岸鉄道計画(ECRL)と大型再開発事業バンダル・マレーシアの再開などが今後の経済成長の下支えになると指摘した(「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙5月17日)。他方、激化しつつある米中貿易摩擦などの外的要因が、輸出国であるマレーシア経済を左右する可能性も無視できないのが現状だ。

なお、実質GDPは2019年第1四半期から2015年基準となった。

(エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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