シンガポール、チリ、ニュージーランド、デジタル貿易基準設定に向け交渉開始

(シンガポール)

シンガポール発

2019年05月30日

シンガポールは5月17日、チリとニュージーランドと、「デジタル・エコノミー・パートナーシップ協定(DEPA)」締結に向けた交渉を開始した。交渉はシンガポールの提起によるもので、デジタル貿易の国際基準の設定を目指す。

DEPAの第1回交渉は、同日にチリのビニャデルマルで開催されたAPEC貿易相会合と並行して、チャン・チュンシン・シンガポール貿易相、ロベルト・アンプエロ・チリ外相、デービッド・パーカー・ニュージーランド貿易・輸出成長相との間で行われた。3カ国は共同声明でDEPAについて、「デジタル貿易に関して新しい国際的なアプローチを確立し、デジタル身分証明や電子支払い、国境を越えたデータのやり取り、人工知能(AI)などデジタル・エコノミーにおいて新しいフロンティアを開拓したい」としている。

グラブやラザダなどDEPAを歓迎

DEPA締結に向けた交渉に対し、配車サービスや電子商取引(EC)などのスタートアップや金融サービス各社は、歓迎のコメントをそれぞれ発表した。シンガポールのEC大手ショッピーは「DEPAにより、デジタル貿易におけるプロセスを簡略化し、透明性を高め、シンガポール企業にとって域内全体で顧客にリーチしやすくなる」とした。中国のアリババ・グループ傘下のEC大手ラザダも、「他の東南アジアの国々でもDEPAと同様の協定が結ばれ、国境を越えたECの成長が加速していくことを望む」と述べた。東南アジア最大の配車サービス会社のグラブ(本社:シンガポール)は「DEPAが最終的にCPTPP〔環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(いわゆるTPP11)〕加盟国や、ASEAN全域で共通ルールを設定する時や、国境を越えた相互運用と起業のイノベーションをサポートする際の基礎となることを望む」と期待を示した。また、米国マスターカードは「データが国境を越えて自由にやり取りできるようになることは、デジタル・エコノミーの根本的な条件だ」と強調した。

なお、WTOの電子商取引に係わる交渉については1月、日本とオーストラリアとの3カ国共同声明を発表して以降、シンガポール政府は新たな情報を発表していない。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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