カニ漁獲割当にオークション制度を導入

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年05月08日

プーチン大統領は5月1日、特定水域での特定種のカニ漁獲量の50%に相当する割当をオークションで配分する制度に関する法案に署名した。ロシア極東の日本海、オホーツク海、カムチャツカ近海などで漁獲されるカニに対しても、オークションによる漁獲割当が予定されている。

署名されたのは、2019年5月1日付連邦法第86号-FZ「連邦法≪水生物資源保護と漁業について≫における水生物資源の漁獲割当の分配手続きの整備に関する変更について」で、新たに「投資(促進)目的のカニの漁獲」の条項を追加する。同条(第29.4条)によると、割当の対象は割当が与えられた海域に近接する沿岸のロシア連邦構成体に登記がある法人もしくは個人事業主で、割当に関する契約締結日から5年以内に連邦政府が指定する目的物(漁船など)を建設(建造)する必要がある。割当の対象となる漁獲量は、各漁獲水域での個別種ごとの可能漁獲量の50%としている。

同じく追加される第33.8条では、割当契約について定めている。割当供与(契約)期間は15年で、契約書にはa.有効期間、b.(割り当てられる)カニの種類、c.漁獲場、d.漁獲法、e.割当量、f.割当有効期間、g.連邦政府が要求する事業計画、h.同事項の実現期間、i.建設する目的物、j.同目的物の技術的仕様などが明記される。連邦政府と合意した事業の実行や目的物の建設が計画に適合しない場合などは、契約期間途中でも契約が打ち切られる可能性もある。

オークションは、電子的形式(インターネット経由)で行われる(第38.1条)。報道によると、ロシア漁業庁は2019年7月にも第1回のオークションの実施を予定しており、日本海での839トンが含まれる。全体の割当枠は36枠の4万トンが想定されており、うち21枠がオホーツク海域の各1,050トン、6枠各1,490トンが深海種向け、3枠各1,100トンが(ロシア北西部)バレンツ海域、5枠各988トンがタラバガニ向けとなっている(「コメルサント」紙4月15日)。割当オークションの対象になると想定されるカニの種類と海域については、表のとおり報道されている。

表 割当オークションの対象となりうるカニとロシア極東水域

今回の制度導入の目的は、オークションの実施を通じて漁船団の設備更新や沿岸の加工施設などへの投資を促し、ロシアの漁業分野の近代化を促すことにある。一方、地元の漁業団体、水産企業、行政府からは、市場の競争激化やモスクワ資本による業界の寡占化などにつながるとの懸念から、本制度導入への反対論も強かった(2018年9月10日記事参照)。

(高橋淳)

(ロシア)

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