WTO改革の意見書を提出、上級委員選定など提案

(中国、世界)

北京発

2019年05月27日

中国は5月13日、WTOに対して「WTO改革に関する意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を提出した。商務部WTO司の担当者は意見書に関する談話を発表し、単独主義や保護主義の台頭などによって多国間貿易体制の権威や有効性が深刻な挑戦を受けている一方、WTOの交渉スピードが遅く、組織運営効率が低く、貿易政策には透明性向上の余地がある、との問題意識を示した。その上で、中国は、WTOが必要な改革を推進し、現在の危機を解決することによって、時代の変化に対応し、多国間貿易体制を維持することを支援するとした。

同担当者は、2018年11月に中国がWTO改革に関する立場を示した文書を発表して以降、WTO改革に多大な貢献をしてきたと述べた。同月にEUなどと共同でWTO上級委員会の改革案を提出したことや、1月に他の75の加盟国と電子商取引に関する共同声明を発表し、WTOにおける電子商取引に関する交渉に参加したことなどをその例として挙げた。

意見書では、改革の3原則として、非差別と開放という多国間貿易体制の核心的価値を保つこと、WTO加盟の開発途上国の利益を保障すること、コンセンサスによる決定方式を守ることを挙げた上で、次の4点を改革の重点に位置付けた。(1)WTOの存続に関する重要かつ緊急性の高い問題の解決、(2)世界の経済ガバナンスにおけるWTOのプレゼンスの向上、(3)WTOの組織運営効率の向上、(4)多国間貿易体制の包摂性の強化。特に(1)では、WTOの紛争解決機能を担う上級委員について、迅速に選定プロセスを開始して空席を埋めることを主張し、そのための提案を示した。また、国家安全保障を理由にした輸入追加関税の賦課に対する通報ルールの強化、WTOルールに合致しない単独主義的な措置に対する規律強化策として、多国間による監視メカニズムの強化や紛争解決手続きの加速化などを提起している。

(小宮昇平)

(中国、世界)

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