ドス・ボカス港製油所建設入札は不落に、随意契約となるもよう

(メキシコ)

メキシコ発

2019年05月10日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称:AMLO)大統領は5月9日に行われた定例会見で、国内7カ所目となるタバスコ州ドス・ボカス港の製油所建設入札が不落に終わったことを発表した。また、同計画は今後、AMLO政権が直接指揮を執り、実質的にはメキシコ石油公社(PEMEX)とエネルギー省が管轄することも併せて発表した。

今回の入札は、2018年12月9日に発表された国家石油精製計画に基づいて実施され(2018年12月13日記事参照)、2022年にはメキシコ全体の1日当たりの精製能力を186万3,000バレルに引き上げる計画だ。入札には、米国の建設業大手ベクテルとアルゼンチンのテチントグループのコンソーシアム、オーストラリアのエンジニアリング企業ウォーリーパーソンズと米国ジェイコブズ・エンジニアリングのコンソーシアムなど4社が指名され、英国資源サービスのテクニップが辞退したため、3社が応札した。しかし同大統領によると、3社の応札金額は予定価格の80億ドルを超過し、100億ドルから120億ドルで応札、かつ工期も1社は2025年を提示するなど、全社が政権の求める2022年5月完成に対応できないという。

民間非営利団体のメキシコ競争力研究所(IMCO)は4月9日、この製油所建設計画が収益を上げられる確率はわずか2%とする報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表しており、限られた国の投資予算をより有益な事業に投じるよう、新たな製油所建設に警鐘を鳴らしていた。今回の不落により、計画がスタートからつまずくとともに、AMLO氏のプロジェクトに対する民間企業のシビアな見方が鮮明になった。

AMLO氏は今回の入札に対し、「応札企業が多くのことを要求してきた」と非難した。AMLO氏の言及どおり、PEMEXがプロジェクトを進める場合、製油所建設にかかる多くの契約が随意契約で締結されることが見込まれる。2019年5月3日付の「レフォルマ」紙によると、AMLO政権は2018年12月1日から2019年4月30日までに公共事業にかかる4万8,233の契約を締結したが、そのうち77.8%が随意契約だという。この数字は前任のエンリケ・ペニャ・ニエト政権の同時期と比較すると3.3%ポイント増となっており、汚職の温床として批判してきた前政権の政府調達プロセスについて、自らも同じ道をたどっているだけでなく、前政権よりも随意契約が増えている、と指摘している。

(岩田理)

(メキシコ)

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