EU新体制構築に向け、EPPなど各政治勢力の主導権争い顕著に

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月29日

今回の欧州議会選挙の結果(2019年5月27日記事参照)、大幅な議席の喪失に直面したものの、依然として同議会における最大会派を形成する、中道右派の欧州人民党(EPP)グループ。同グループは5月28日、非公式EU首脳会議に先立って、EU首脳や同グループ関係の各国代表を交えた「EPPサミット会合」(2019年5月27日記事参照)をベルギー・ブリュッセルで開催。同グループが次期・欧州委員会委員長の筆頭候補者に指名し、今回の選挙戦を展開したマンフレート・ウェーバー議員(ドイツ選出)を支持する方針を全会一致で了承した。

次期・欧州委員長人事をめぐる最大会派と躍進会派の綱引き始まる

2014年の欧州議会選挙で初めて実施された「筆頭候補者プロセス」は、次期・欧州委員会委員長ポストを、改選された欧州議会の最大会派が選挙前に指名していた筆頭候補者(複数指名する政党もある)から選出する仕組み。EPPグループは5月28日、「欧州議会がこのプロセスを支持する方針を確認した」とツイッターで発表した。ウェーバー議員は5月28日、「われわれは常に民主的な欧州のために戦ってきた。(今回の選挙で)投票率が上昇(2019年5月28日記事参照)したことで強力な(EU市民からの)信託を得た」とツイッターに投稿した。今回の選挙で、EPPグループ自体は議席を大幅に減らしたにもかかわらず、「親EU勢力」全体として支持を集めたことから、その中の最大会派(EPPグループ)が選んだリーダーとして次期・欧州委員長就任を狙う姿勢だ。

しかし今回、勢力拡大が予測されていたEU懐疑派や極右派を上回る、大幅な議席獲得に成功し、第3会派に躍進した穏健リベラル派「欧州自由民主同盟+ルネサンス(ALDE+R)グループ」は、EPPグループがよりどころとする「筆頭候補者プロセス」維持について、反発を強めている。同グループ代表を務めるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は同日、「EPPグループは筆頭候補者プロセスの維持を強く主張しているが、汎(はん)欧州候補者リスト導入(2018年1月26日記事参照)に反対した彼らの主張にもはや、正当性はない」と発信、欧州委員長人事における筆頭候補者プロセスに反対する方針を明らかにした。同議員は続けて、「次期・欧州委員長は、欧州刷新のための明確な政策をもって(今回の選挙で支持を伸ばした)親EU勢力の立場を広く代表することこそが大事」と主張。あくまでEPPグループに対抗し、次期・EU首脳人事に関与する考えを示唆した。

(前田篤穂)

(EU)

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