欧州議会の議員定数を46削減し705に-委員会がポスト・ブレグジットの再編を協議-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年01月26日

欧州議会・機構問題委員会(AFCO)は1月23日、英国のEU離脱(ブレグジット)を念頭に、議員定数など今後の欧州議会の在り方について協議した。同協議で、英国の現有73議席のうち、46議席を削減、27議席を他の加盟国に再配分し、全体の議員定数を705に削減する欧州議会議員数の再編案が明らかにされた。

新定数の27議席は再配分へ

欧州議会内で、「ブレグジット問題」や「透明性」などを担当する機構問題委員会(AFCO)は1月23日、英国のEU離脱以降の欧州議会の在り方について協議し、議員定数を現在の751から46削減して705に改めるほか、27議席については人口比などのバランスを考慮し、不足が指摘される14カ国に再配分する案を明らかにした。現在、英国選出議員の議席数は73で、ブレグジットに伴い46は削減、残りの27は再配分という対応になりそうだ。この結果、2019年3月のブレグジット以降の同年5~6月に予定されている次回の欧州議会選挙は、705議席をめぐって争われることになる見通しだ。

現在の欧州議会選挙制度では、EU市民は国籍に関係なく、その居住国で、議会各会派が各国で擁立した候補者に投票(非拘束式比例代表制を採用する国が多いが、国によって異なる)することができる。このため、加盟国ごとに議席を割り当てる制度が取られている。今回の再編案によると、再配分する27議席のうち、現在のEU加盟国の中で、最大の人口規模を誇り、現有議席数も最多のドイツ(96議席)については変更しない(法令上の配分議席上限は96)が、フランスとスペインには5議席、イタリアとオランダは3議席、アイルランドは2議席、ポーランド、ルーマニア、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スロバキア、フィンランド、クロアチア、エストニアは1議席、それぞれ追加配分されることになる。

なお、欧州議会は今回の再編案についての発表で、46議席の削減は単なる返上ではなく、「今後の新規EU加盟国や選挙制度改正に向けた留保」という表現を用いている。

「汎欧州候補者リスト」の部分導入も協議

また、今回の機構問題委員会では、将来の欧州議会選挙制度改革についても協議された。欧州議会では、現在の加盟国ごとの選挙区(議席割り当て)システムを見直し、加盟国の枠を越えて「汎(はん)欧州(統一)候補者リスト」から選択する方式(EU枠のような制度)を議員定数の一部に対して導入(併用)する案が浮上している。同委員会は今回の協議で、「汎欧州候補者リスト」から選出する議員数はその時点の加盟国数と同数とすることまで合意が得られたとしている。欧州議会はEU市民としての意識を醸成する効果が期待できるとしているが、ナショナリズムが激しく台頭する現在の欧州において、このような新たな試みが受け入れられるかは疑問も残る。同委員会も今回の発表で、「欧州議会選挙制度改革には、EU理事会の全閣僚の同意と全加盟国による批准も求められる」としており、早急な制度改革が困難なことを示唆した。

また、今回協議された議員定数削減など欧州議会再編案について、新たな措置の実施は英国が完全にEUを離脱した場合に限ったことで、英国がEU離脱を撤回した場合は現状を維持する方針であることも付言している。

英国離脱に伴う財政負担にも配慮か

他方、機構問題委員会は、ブレグジットが実行された場合でも、北アイルランド地域の市民(英国とアイルランドの二重国籍者が多い)については、和平プロセスに道筋をつけた「ベルファスト合意(聖金曜日協定)」にも鑑み、アイルランドで行われる欧州議会選挙での選挙権を認められるべきとの考えを明らかにした。

今回の同委員会での協議について、欧州議会内の最大会派である欧州人民党(EPP)グループに所属するダヌタ・ヒュブナー議員(ポーランド選出、この問題の共同報告責任者を務めた)は「われわれはEUから大国(英国)が離脱する事実に適切に対応する必要がある。(議会維持経費負担にも配慮して)その意味で、欧州議会の規模縮小の必要性も認識すべきだ」とコメントした。

なお、今回の同委員会での協議結果については、2月にストラスブールで開催予定の欧州議会・本会議で審議に付された上で、欧州理事会(EU首脳会議)で満場一致の支持が得られれば、欧州議会での採決にかけられる見通しだ。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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