欧州消費者機構、パッケージへの栄養表示で請願運動

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月21日

欧州消費者機構(BEUC)は5月20日、同機構のメンバーである欧州7カ国の消費者団体が欧州で流通する食品・飲料のパッケージに、「栄養(ニュートリ)スコア」方式による栄養情報表示の展開を求める請願運動に取り組むことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同方式は、食品と飲料に「A」から「E」までの栄養評価を与え、各評価に対応する緑から赤までの5段階の色調と併せて表示するもの。欧州ではフランス、ベルギー、スペインで任意の導入が始まっている。

表示の分かりやすさで、欧州全体での普及を目指す

BEUCによると、今回の請願運動はフランス消費者同盟(UCF-Que Choisir)が主導し、EU加盟国7カ国から100万人以上の署名を集めることを前提に、欧州委員会に対して立法提案することを認める「欧州市民イニシアチブ(ECI)」の手法を活用するという。欧州の消費者団体がECI活用を前提に連携するのは初めてだが、BEUCはこうした取り組みを支持し、消費者による健康食品の容易な選択は欧州議会選挙(5月23~26日)に向けた「優先課題の1つ」との見解を示している。

食品・飲料をめぐる栄養情報の表示にはさまざまな方法が想定されるが、一般消費者が店頭で複雑な成分表示を精読・理解するのには限界があるため、BEUCは欧州全体で表示制度の普及・浸透を図るため、消費者にとっての分かりやすさを重視。「ニュートリ・スコア」システムについて、EUとしての導入を目指すことで、請願運動を具体化・立法化を目指す狙いがあるとみられる。栄養成分として評価される「野菜」「果物」「食物繊維」などの要素が多く含まれる場合はプラス評価(A評価に近づく)に、逆に評価されない「糖分」「塩分」などの要素が多く含まれる場合はマイナス評価(E評価に近づく)になることを想定している。

しかし、新たな表示導入を求められる食品・飲料産業からは反対の声も根強く、企業を含めた利害関係者から支持が得られるかは未知数だ。BEUCのモニーク・ゴイエン代表は、欧州においても肥満率が高まる中、「欧州の消費者がより簡単にヘルシーな食品を選択できるよう、栄養情報の表示を実践に移すための強い政治的意思が必要だ」とコメントしている。

なお今回、請願運動を開始するのは、オランダ、ギリシャ、ポーランド、スペイン、ベルギー、フランス、ドイツの消費者団体だ。

(前田篤穂)

(EU)

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