米中合意できず、リスト3への追加関税開始、リスト4への追加関税も手続き指示

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年05月13日

米国政府は5月9、10日と2日間にわたり、中国政府と閣僚級の貿易交渉会合をワシントンで開催したが、合意できずに終わった。会合後、トランプ大統領は自身のツイッターで、「両国は率直かつ建設的な議論を行った」と一定の評価をしつつも、交渉妥結について「全く急ぐ必要はない」とも発言しており、合意にはしばらく時間がかかる様相も呈し始めている。

5月10日から関税25%への引き上げを実施

5月9日付官報で発表のとおり、米国東部時間5月10日午前0時1分に、米国政府は中国原産の輸入品に関するリスト3〔対中輸入額2,000億ドル相当の5,745品目(米国関税率表の上位8桁、一部品目は部分的に対象)〕PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の追加関税率をそれまでの10%から25%に引き上げた(2019年5月9日記事参照)。米国税関国境保護局(CBP)は5月10日付で同措置の正式な導入を通達外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

上記の官報では、5月10日よりも前に輸出された中国原産品は、米国の到着が5月10日以降となった場合でも今回の追加関税率引き上げの対象外とされた。しかし、米国通商代表部(USTR)は実施要領の変更を通達、該当製品を「6月1日より前までに米国に輸入されるもの」に限ると加えた。これにより、5月10日より前に輸出された中国原産品であっても、6月1日以降に米国に到着したものは、25%の追加関税率の対象となる。

また、ライトハイザーUSTR代表は5月10日、「トランプ大統領から、約3,000億ドルに相当する、(追加関税の対象となっていない)残りの全ての中国からの輸入品についても、関税賦課の手続きを始めるように指示を受けた」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。手続きの詳細PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は5月13日(米国時間)、USTRのウェブサイトで公表。これまでのリスト1からリスト3の手続きでは、追加関税の対象品目を発表した後、パブリックコメント、公聴会を実施し、そこで受けたコメントへの反論も受け付けた上で、最終的な対象品目を確定している。対象品目の公表から実際の関税賦課までには2~3カ月を要している。

リスト4は広範にわたる品目を対象としており、これに該当する中国原産品を輸入している在米日系企業は少なくない。リスト3への追加関税は2018年12月と3月の2度にわたる交渉期限に直面したことから、25%への引き上げをある程度予想できた。しかし、米国政府がこれまであまり言及してこなかったリスト4への追加関税は、事業計画の大幅な見直しにつながりかねないとして不安視する企業もみられる。

(若松勇)

(米国、中国)

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