高速鉄道計画、ロシア2大都市間を2時間で結ぶ見通し

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2019年05月07日

ノーボスチ通信は4月23日、ロシア鉄道子会社の「高速鉄道」社が検討しているモスクワ~サンクトペテルブルク間の高速鉄道建設計画の一端を報じた。同社によると、専用の線路を敷設し、最大時速400キロで運行するようだ。これにより両都市間は2時間で結ばれることとなる。現在、両都市の鉄道での最速移動時間は特急「サプサン」による約4時間だ。計画が実現すれば、所要時間は半分に短縮される(注)。

写真 モスクワ~サンクトペテルブルク間を走る特急列車「サプサン」。両都市を約4時間で結ぶ(ジェトロ撮影)

モスクワ~サンクトペテルブルク間を走る特急列車「サプサン」。両都市を約4時間で結ぶ(ジェトロ撮影)

写真 サンクトペテルブルクにあるモスクワ駅。「サプサン」をはじめとしたモスクワ方面への列車の起点となる(ジェトロ撮影)

サンクトペテルブルクにあるモスクワ駅。「サプサン」をはじめとしたモスクワ方面への列車の起点となる(ジェトロ撮影)

高速鉄道では、4段階の座席等級が設定されることや、運賃が座席等級や位置、車両、購入時期によって変動するとの見通しが報じられている。しかし、高速鉄道の本格的な計画や調査はまだ開始されておらず(「ノーボスチ通信」4月23日)、開業見通しは現時点では未定だ。走行ルートについても、まだ決まっていないが、在来線の西側を並走するルートや、在来線ルートから外れたロシアの古都ノブゴロド近郊を通る迂回ルートなどが検討されている。タス通信によると、6月6~8日に開かれる第23回サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、高速鉄道の建設に関する何らかの合意署名がなされるとの観測が出ている。

この高速鉄道計画は、モスクワとカザンを結ぶ高速鉄道とのてんびんにかけられていた。「コメルサント」紙(4月16日)によると、もともと、モスクワ~サンクトペテルブルク間の高速鉄道計画は1991年ごろから議論・調査されてきたが、プロジェクト自体は本格化せずに凍結され、モスクワ~カザンの計画の方が実現可能性が高いと目されていた。しかし、2018年12月にアントン・シルアノフ第1副首相兼財務相がモスクワ~カザン計画の採算性に疑問を呈すなどして状況が一変。3月には財務省がモスクワ~カザン計画の予算を別のプロジェクトに振り分けることを提案した。これを受け、4月10日にはプーチン大統領がモスクワ~サンクトペテルブルク間の建設を支持した。マクシム・アキモフ副首相は「モスクワ~カザンの計画自体が頓挫したわけではない」と述べており、政府内で、モスクワ~サンクトペテルブルクの方の優先度が上回ったとみられる。

こうした動きを受けて、モスクワ~サンクトペテルブルクの高速鉄道の効果に関する議論が各所で行われている。エフゲニー・エリン・サンクトペテルブルク副市長は、高速鉄道の開業でモスクワの市民や大企業の一部がサンクトペテルブルクに移転する効果を期待している(「ノーボスチ通信」4月17日)。ロシア鉄道のアレクサンドル・ミシャリン第1副社長は、開通すれば両都市間の旅客数は現在の1,100万人から3,300万人に増加するほか、「サプサン」の旅客によって占められている在来線の輸送能力の一部を貨物運搬に振り分けることが可能となり、国内貨物の輸送にとっても意義があると説明している(「グドーク」4月19日)。

一方、在ロシアの日系物流企業はジェトロのインタビューに対し、サンクトペテルブルク港からモスクワへのコンテナの陸上輸送手段はトラックをメインとしているため、高速鉄道の建設によって在来線に貨物輸送の余裕ができても、物流スキームが大きく変わるとは考えにくいとコメントした。

(注)航空機での両都市間の移動時間は約1時間30分。

(一瀬友太)

(ロシア)

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