政府、法人税、所得税の引き下げを柱とした大型減税を発表

(オーストリア)

ウィーン発

2019年05月13日

オーストリア政府は、5月1日に大型減税プログラムを閣議決定した。中低所得者に対する減税と企業負担の軽減を行う。所得税率および法人税率や健康保険料の引き下げ、規制緩和、減価償却の計算基準の変更などの政策を通じ、2023年までに最終的に年間65億ユーロの負担軽減の実現を目指す。

2020年から2023年にかけて段階的に実施する税制改革の柱は、所得税と法人税の減税だ。所得減税については、2021年に年間所得1万1,000ユーロ超1万8,000ユーロ以下の税率を25%から20%に引き下げ、2022年には1万8,000ユーロ超3万1,000ユーロ以下の税率を35%から30%に、3万1,000ユーロ超6万ユーロ以下の税率を42%から40%に引き下げる。年間で、1人当たり100~1,100ユーロの減税となる。なお、6万ユーロ超の所得に対する税率(3段階あり、最高税率は100万ユーロ超の55%)は変更しない。

現行25%の法人税率は、2022年に23%、2023年に21%へと引き下げられる。企業立地の魅力を高めるのが狙いだ。EU加盟国の平均法人税率は21.9%(2018年)だが、それを下回る税率となる。

所得税が免除される低所得層(年間所得1万1,000ユーロ以下)も、2020年から健康保険料が引き下げられるため、年間の保険料支払い額は平均280ユーロ(年金生活者は170ユーロ)減少する。また、零細企業の税負担は、利益の非課税額(控除額)の3万ユーロから10万ユーロへの引き上げや即時償却可能資産の拡大(取得価額400ユーロから800ユーロへ引き上げ)などを通じて軽減される。

財源は、デジタル税の導入(オンライン広告の5%に課税)、たばこ税の引き上げに加え、いまだ明確になっていないが、行政改革や年金支給額の見直しなどで賄うという。税制改革の実施は好調な経済が下支えとなっており、2018年に税収が前年比86億ユーロの増収となり、財政収支がGDP比0.1%の黒字に転じた。これは、EU加盟(1995年)以降初めてのことだ。主要な経済研究所であるオーストリア経済研究所(Wifo)とオーストリア高等研究所(IHS)はいずれも、当該改革により個人消費と設備投資が刺激され、財政黒字も維持可能としている。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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