カザフスタン、カスピ海域の船舶安全基準策定に向け国際組織に参画

(カザフスタン、ロシア、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン)

欧州ロシアCIS課

2019年05月17日

カザフスタン産業インフラ発展省は5月14日、黒海地域で港湾に入港する外国船籍の船に対し、船内設備や乗組員などの安全規定適合に関する検査(ポートステートコントロール:PSC)を行う多国間の枠組みである「黒海MoU(Black Sea Memorandum of Understanding: BSMoU)」のオブザーバー資格を取得したと発表した。

PSCは、自国港湾に寄港する外国船籍の船の海難事故を防ぐため、当該船舶・乗組員が国際的な安全基準が満たしているか(注)、入港国の港湾管理当局などが立ち入りで検査することを指す。検査手続きの調和や船舶情報・ノウハウなどの共有などを目的に、欧州地域(パリMoU)、アジア・太平洋地域(東京MoU)、中南米地域(ラテンアメリアMoU)、カリブ海地域(カリブ海MoU)、インド洋地域(インド洋MoU)、地中海地域(地中海MoU)、西・中央アフリカ地域(アブジャMoU)、中東湾岸地域(リヤドMoU)などで、地域協力の枠組みがつくられている。黒海MoUは、黒海沿岸国6カ国(ブルガリア、ジョージア、ルーマニア、ロシア、トルコ、ウクライナ)が加盟し、米国やアゼルバイジャンなどがオブザーバー参加している。

カザフスタンは、黒海に面していないものの、カスピ海には自国港湾(アクタウ港、アティラウ港など)を所有している。カスピ海については、法的地位が2018年8月に長年の議論の末にようやく確定したため(2018年8月13日記事参照)、上記のような海上輸送船舶に関するPSCの地域協力の枠組みが存在していない。

現在、カスピ海沿岸5カ国(カザフスタン、ロシア、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン)で同枠組み設立に関する研究・議論が行われている。カザフスタンの産業インフラ発展省は、今回の同国の黒海MoUへの参画について、船舶の安全監督分野での先進的事例や実務経験の交換を通じ、カスピ海域での海上運航安全の一般的・義務的要求の順守と、無違反船舶への検査(回数)の省略による輸送効率化の達成、将来的な海港湾間での統合的なデータ管理や統一的な安全・検査基準の構築、各港湾の外国船舶監督官の能力の向上を可能にするもの、と説明している。今後、カスピ海域の民間海上輸送分野でのルール形成が加速することが想定される。

(注)国際基準が満たされていない船舶を「サブスタンダート船」と呼ぶ。

(高橋淳)

(カザフスタン、ロシア、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン)

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