第1四半期のGDP成長率は0.5%に鈍化、内外需ともに低調

(香港)

香港発

2019年05月13日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)統計処は5月2日、2019年第1四半期(1~3月)の香港の実質GDP成長率の推定値(注)を前年同期比0.5%と発表した。4四半期連続で前期を下回り、2018年第4四半期(10~12月、前年同期比1.2%)より0.7ポイント下落した。2009年第3四半期(7~9月、マイナス1.7%)以降で最も低い成長率となった(図参照)。季節調整済みの前期比の成長率は1.2%だった。

図 香港の実質GDP成長率の推移(四半期ベース)

香港政府は、第1四半期の成長率が鈍化した理由について、「世界経済の減速とさまざまな外部環境のマイナス要因が悪影響を及ぼした」とし、加えて、「比較対象となった2018年第1四半期の数字が高かったため」と分析している。

内需では、個人消費の落ち込みが目立った。個人消費支出は前年同期比0.1%増と、前期(同2.7%増)より2.6ポイント下落した。政府消費支出は4.5%増と、前期(4.9%増)比で増加幅は縮小したが、好調を維持した。固定資本形成は7.0%減と、前期(5.8%減)より1.2ポイント下落した。

外需も落ち込んだ。財輸出は4.2%減と、前期より4.2ポイント下落し、財輸入も4.6%減と、前期(0.5%減)より4.1ポイント下落した。サービス輸出は1.4%増と、前期(3.3%増)比で1.9ポイント下落し、サービス輸入も1.0%減と、前期(2.1%増)より3.1ポイント下落した。

ただし、その他の指標をみると、経済復調の兆しが見える。例えば、香港証券取引所が公表している株価指数(ハンセン指数)は、2018年10月に2万5,000ポイントを割り込んだものの、2019年に入って3万ポイント台に回復した。さらには政府系機関の香港生産力促進局(HKPC)によると、同年第2四半期(4~6月)の香港中小企業の景況感指数は46.0に回復し、3年ぶりの高水準となった。香港への海外からの来訪者数も2019年第1四半期は16.8%増と好調を維持している。

中国銀行の香港子会社である中国銀行(香港)は、今後の香港経済の見通しについて、「(1)完全雇用の維持、(2)米国の低金利政策の継続、株価など資産市場の安定、(3)海外から香港への観光客の増加、(4)国境を越えた金融サービスの輸出増などのプラス要因が続けば、香港経済は緩やかな成長へと転換するだろう」と分析している。

(注)香港政府は足元の経済動向の早期把握などを目的に、GDP成長率の推定値の公表を2019年第1四半期から開始した。5月17日に修正後のGDP成長率と、その他の経済分析の結果を公表する。

(吉田和仁)

(香港)

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