デジタル通商、韓国の新たな成長エンジンに

(韓国)

ソウル発

2019年05月24日

韓国産業通商資源部はデジタル通商の概念について、「インターネットと情報通信技術(ICT)などを利用した国家間の貿易活動(商品+サービス+データ)全般」と定義している。また、企画財政部は、デジタル通商の主要な類型には、電子商取引(類型A:アマゾン、イーベイ、アリババなど)、動画配信(類型B:ユーチューブ、ネットフリックスなど)、電子情報の越境移動(類型C:iCloudなど)などがあるとし、オンラインを通じた商品取引だけでなく、視聴覚ストリーミング、検索エンジン、ソーシャルメディア(SNS)、シェアリングエコノミーなど、インターネットプラットフォームサービスやクラウドサービスを通じたデータ移動などを包括するものと定義している。

韓国政府はデジタル通商を韓国経済の新たな成長エンジンと位置付けており、その発展のために国内の規制改革や制度改善を進め、諸外国との通商摩擦を最小限に抑えるよう管理していくことを表明している。

デジタル通商を取り巻く世界の状況について、デジタル技術の発展で通商環境は大きく変化したにもかかわらず、国際社会の議論は初期段階にとどまっており、こうした変化に対応できていない、と韓国政府は分析している。既存の通商規範では対応が困難な事例として、海外にサーバーを置きサービスを提供するインターネット企業に対する規制、こうした企業に対する課税などの問題を挙げている。

そのため、電子商取引を円滑にする要素の積極的な導入、グローバルプラットフォームとの公正取引のための環境整備、規範導入、電子的転送物の永久無関税化、海外デジタルコンテンツの差別禁止、不法コンテンツ流通に対する規制協力体制構築、データ活用の促進、技術・規制の標準化先導のための国際協力、およびデジタル格差解消事業を推進していくと表明した。

韓国の電子商取引におけるスタンスとして、プライバシー保護については、個人情報を国外に越境させる場合には原則として個人情報の利用目的や項目などについての一定の内容を個人に通知し、同意を得なければならない。個人情報以外については、重要情報、空間情報、金融会社が保有する個人顧客の固有識別番号に関して越境移動の制限がある(表1参照)。

表1 主要国と韓国の相対的なデータ規制水準

なお韓国の主要個人情報保護に関する法律と執行機関は表2のとおり。

表2 韓国の主要個人情報保護関連法律および執行機関

サーバーなどのコンピュータ設備の国内設置を求める一般的な法令は存在しない。ただし、(1)行政機関や公共機関に対してクラウドサービスを提供する場合、(2)韓国国内に本店を置く金融機関の電算室、災害復旧センターの場合、(3)医療機関が電子カルテシステムとそのバックアップ装置を外部で管理・保管する場合には、コンピュータ設備を韓国国内に設置する必要がある。

ソースコードに関しては、その公開を要求する一般的な法令は存在しない。ただし、行政機関が電子文書を保管・流通するために使用するシステムについては、国家情報院によって安全性の確認ができたセキュリティー措置を講じる義務があり、国家情報院はその履行状況を確認することができると規定されている。

韓国の政策・スタンスに対し、韓国の関連業界では、韓国コンテンツの不法流通への対応について声を上げている。産業通商資源部による関連企業約1,000社を対象に行ったデジタル通商規範企業アンケート調査によると、韓国企業の海外進出における隘路事項は、(1)該当国内の現地プラットフォームおよびコンピューティング設備使用・設置要求、(2)該当国の同種企業との差別待遇、(3)データの越境移動制限、などが挙げられている。

〔諸一(ジェ・イル)〕

(韓国)

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