モスクワでレンタル収納サービスが徐々に拡大

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年05月16日

面積が広大なロシアだが、人口密度の高いモスクワでは、レンタル収納スペース(セルフストレージ、以下、SS)サービスが拡大を見せている。不動産コンサルティング世界大手ナイトフランクは5月6日、2018年にモスクワでのSS倉庫の施設数は62カ所(前年比9カ所増)で、総面積は15万8,745平方メートルに達したと発表した。入居率も年々上昇しており、2018年は90.2%と、前年に比べ4.4ポイント拡大している。

利用者は個人が約8割を占め、法人は2割にすぎない。平均利用期間は8.5カ月(2018年)で、前年に比べ1カ月ほど延びている。利用の平均価格は1平方メートル当たり月額1,580~1,885ルーブル(約2,686~約3,205円、1ルーブル=約1.7円)で、立地場所、サービス内容・品質(配送サービスの有無、保管環境、安全性、保険の付保、搬入出可能時間帯など)によって異なるようだ。

モスクワでSSサービス提供する事業者は24社ある。このうち、大手事業者は表のとおりで、最大事業者の「スクラドフカ」は9つの施設、延べ面積2万5,782平方メートルを保有する。

表 ロシアにおける大手ストレージサービス事業者リスト

SS事業は拡大しているものの、立地が限定されることが成長の阻害要因となっている。主要なSS事業者が加盟する個人保管事業者協会(AKIKH)のドミトリー・マイエル会長は、ロシアでSS事業は安定的に拡大しており、今後数年間は20~25%増加が見込まれているとする。一方、ナイトフランク産業・倉庫不動産部セルゲイ・クジチョフ部長によると、人気の立地先はモスクワ環状道路(MKAD)より内側の住宅密集地や地下鉄駅の近隣だが、SS倉庫に活用できそうな遊休施設の数は限られているほか、物件価格の高騰や都市計画ルールがモスクワ市内での新たな開設の妨げとなっていると指摘する。

SSの利用者について、不動産サービス世界大手ジョーンズラングラサール(JLL)は、住宅面積がそれほど広くなく収納スペースが限られる所得が高くない層としている(「コメルサント」紙5月6日)。インターネットメディア「ストーンフォレスト」(2月19日)によると、SSの主な活用理由は、子供の出生や年老いた親族の受け入れなど、家族とそれに伴う荷物が増える一方、家の中のスペースが限られ、かつ、廃棄・売却できない荷物を抱えているケース、家の修理や引っ越しなどに伴い家具などの一時保管が必要な場合、小規模事業者が在庫保管場所として活用する事例などが挙げられるという。各事業者のウェブサイトをみると、利用者が保管している製品は、自転車・バイク・ゴムボート、スキー板・スノーボード・ソリなどのスポーツ用品、タイヤ・ホイール、衣類、玩具・児童用製品、書類、家具などのようだ。

サンクトペテルブルクでも導入が進みつつあり、12の事業者が12施設、4つコンテナ保管ヤードを有し、平均価格は1平方メートル当たり月額1200ルーブルとなっている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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