ガソリン価格上昇のシーズン入り、トランプ大統領は中東産油国に増産呼び掛け

(米国)

米州課

2019年05月29日

米国では、5月最終月曜日のメモリアルデーから9月最初の月曜日のレーバーデーまでがドライブ・シーズンといわれており、通常この時期はガソリン価格が上昇する。2019年のドライブ・シーズンは5月27日から9月2日までで、米国エネルギー情報局(EIA)は、ガソリン価格が今後数カ月間上昇し、2019年夏季(4~9月)のレギュラーガソリンの平均小売価格は1ガロン(3.78リットル)2.92ドルと、3ドルに迫ると予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

米国の石油製品価格の動きは、国際的な原油価格指標であるブレント価格に連動する傾向がある。5月20日時点のブレント価格(スポット)はバレル当たり73.21ドルで、2018年の水準78.34ドルより約7%低い。しかし、ガソリン需要の増加や在庫の減少、精製マージン拡大により、2019年の夏はガソリン価格が上昇するとEIAはみる。また、小売されるガソリンは、冬用ガソリンからより価格の高い夏用ガソリンへの切り替えが行われるため、価格は春先には値上がりする。

米国自動車協会(AAA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますはメモリアルデーの週末に3,760万人の米国人が車で旅行すると予想していたが、この数字は前年より3.5%多い。ガソリン需要の増加は価格上昇に拍車をかける。ガソリン在庫の減少も、価格の上昇をもたらす。在庫は2019年初には2億4,806万バレルと通常よりも高い水準で始まったが、その後減少し、5月17日の週末には2億2,874万バレルまで落ち込んでいる。

米国ではシェールオイルの増産により原油輸入が減り、製油所ではWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)を基準として値付けされる割安な国産原油の調達が増加する一方で、ガソリンなどの石油製品価格はブレント価格に準拠する結果、石油精製のマージンが拡大している。5月20日時点のWTIは63.12ドルで、ブレントとのスプレッドは10ドルを下回っており、これが製油所のマージンにつながっている。

ブッシュ政権時代の2008年6月にガソリン価格が一時1ガロン4ドルを超えた。車社会の米国では、一般にガソリン価格が4ドルを超えると消費意欲が落ち込み、景気の下押し要因になるといわれている。2020年11月の大統領選に向けて、ガソリン価格の上昇はトランプ政権の支持率低下につながる可能性があり、トランプ大統領は、イランやベネズエラに経済制裁を科しつつ、中東産油国に対しては原油の増産を強く求めている。

(木村誠)

(米国)

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