中国で「ゲーム・オブ・スローンズ」最終回の配信延期

(中国)

広州発

2019年05月30日

中国ネット大手のテンセントは5月20日、自社の動画サイト「騰訊視頻」で配信している米国の人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の最終回(第8章第6話)の配信を延期すると発表した。最終回は同日午前9時の配信開始を予定していた。同社は、延期の原因は通信上の問題で、配信時期は別途告知するとしている。現在は最終回の予告編のみ視聴可能となっている。

「ゲーム・オブ・スローンズ」は、米国の放送局HBOが作成する、ジョージ・R・マーティンの小説「氷と炎の歌」を基にしたドラマ。架空の王国を舞台に王座をめぐる名家の争いを描く。2015~2016年、2018年には米国で優れた番組に与えられるエミー賞の作品賞を受賞している。

海賊版では視聴可能

「ゲーム・オブ・スローンズ」は中国でも高い人気を集めており、「騰訊視頻」での視聴回数は10億回を超えている。正規の配信は延期となったものの、既にネット上では海賊版が視聴可能と報じられている(「北京商報網」5月21日)。ネット上での海賊版監視を行うMUSOによると、第8章の放送開始から24時間以内に海賊版が5,500万回放送されたという。

今回の配信延期や海賊版の流通について、中央財経大学文化経済研究院の魏鵬挙院長は「『騰訊視頻』の有料会員の契約継続に、マイナスの影響を与える可能性が高い」としている(同)。

同時に、「ゲーム・オブ・スローンズ」の海賊版への需要が旺盛な理由は、無料で視聴できるためだけではなく、「正規版では(中国内の規制により)削除されている場面を見ることができるため」との指摘もある(同)。中国で配信されている正規版は暴力的な場面や性的な場面が削除されており、一部の視聴者からは不満が出ているとの見方もある。

米中貿易摩擦の影響との報道は少数

配信延期と米中貿易摩擦との関連について、海外では「ウォールストリート・ジャーナル」紙をはじめとする幾つかのメディアでそれらを関係づける報道が見られる。

一方、中国内の大手メディアではそうした報道は現時点でほとんど見られない。

(河野円洋)

(中国)

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