メイ首相、離脱協定法案採決に向け新提案、与野党から反発

(英国、EU)

ロンドン発

2019年05月22日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、テレーザ・メイ首相は5月21日、6月初旬に議会で採決する離脱協定法案(2019年5月16日記事参照)について、議会支持獲得のため新たに10の提案を打ち出した(表参照)。

表 離脱協定法案採決に向けた政府新提案10項目

4月初旬から続いていた政府と野党・労働党の協議は、5月17日に双方が打ち切りを表明。最後まで折り合わなかったEUとの関税同盟について、メイ首相は今回、かねて政府が主張していた独自の通商政策と両立可能な関税取り決めか、労働党との協議中に政府が妥協案として提示していた時限的な関税同盟の2案から議会が決定することを提案。労働党内で246人の議員のうち120~150人が支持する2度目の国民投票の実施も、議会採決に委ねる意向を示した。

メイ首相は演説で、「離脱協定法案が可決されて初めて、議会はEUからどのように離脱するか決定できる」とコメント。「反対票を投じるのは、ブレグジット阻止に投じるのと同じ」と続け、新提案に基づく法案への支持を訴えた。

しかし、与野党の反応は極めて厳しい。労働党のコービン党首はメディアの取材に対し、「ほとんどこれまで議論したことの焼き直しで支持できない」と明言。与党・保守党では、3度目の離脱協定案採決では賛成に回った(2019年4月1日記事参照)ボリス・ジョンソン前外相、ドミニク・ラーブ前EU離脱担当相、ジェイコブ・リースモグ議員らEU離脱強硬派議員も、新提案は関税同盟や2度目の国民投票につながりかねないと一斉に反発している。アイルランドと北アイルランドの国境管理の安全策(バックストップ)について反対を続けている民主統一党(DUP)のナイジェル・ドッズ副党首も声明で、「離脱協定案に含まれる根本的な欠陥は変わっていない」と一蹴。メディアの取材に、同党は4度目も反対するとしている。

メイ首相は5月16日、6月の離脱協定法案採決の結果にかかわらず、採決後に後継首相選出のための日程を明らかにすることを党内協議で約束。求心力がほぼなくなっていることも、協定法案の議会通過を極めて困難にしている。妥協できない保守党に失望して4月に同党を離党したニック・ボールズ議員(2019年4月2日記事参照)は「テレーザ・メイがこの(新提案を示した)演説を2年前にしていたら、われわれは既にEUから離脱していただろう」とツイート。これまでの首相のかじ取りに苦言を呈した。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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