トルドー首相、テック部門の成長は移民の受け入れによるものと指摘

(カナダ)

トロント発

2019年05月28日

北米最大といわれるテックカンファレンス「コリジョン」(2019年5月27日記事参照)において5月20日、カナダ・トロントでの開会式に参加したトルドー首相は、来場者の前で30分にわたるインタビュー形式の基調講演を行った。

トルドー首相は、世界経済が知識経済化、技術化、革新化していく中で、カナダは天然資源が豊富なだけでなく、これまで積極的に移民を受け入れてきたことで、高等教育を受け、創造力を持った、働く意欲の旺盛な人材が多数集まっていると述べた。さらに、これらの人材が活躍し、技術的にも、経済的にもカナダに影響を与えてくれたことと、連邦政府がインフラ分野などにも積極的に資金を提供し、各地にエコシステムを確立してきたことなどの結果、多くのカナダのテック企業が成功を収めていると指摘した。トルドー首相は、グローバル企業が多様性のあるカナダに進出する価値は十分あるとし、カナダ政府は引き続き移民の受け入れを積極的に行っていくと語った。また、長期的視点に立った投資優遇策なども用意しており、2018年に設立されたカナダ投資庁(インベスト・イン・カナダ)(2018年4月16日記事参照)についても言及し、カナダへの投資を考える外国企業に対し、ワンストップでの支援を提供していることを話した。

投資先としてのカナダの魅力について、トルドー首相は次を挙げた。

  1. 多くの国と自由貿易協定を締結していることから、グローバルなマーケットへのアクセスが容易だ。
  2. 優れた高等教育システム、移民政策などにより優秀な人材が確保できる。
  3. (移民が多いことから)多様性を受け入れる堅固で活気のあるコミュニティーが存在し、グローバルマーケット、グローバル・サプライチェーンの中でのカナダの位置付けなどについても理解している。
  4. 安定した社会経済、財政・銀行システム、法制度が確立していて、企業設立には最適だ。

トルドー首相は、カナダはG7で唯一、他の6カ国と貿易協定を締結している国であること指摘し、カナダ企業が引き続きグローバルマーケットに積極的にアクセスできる環境を整えていくと述べた。カナダにとって最大の貿易相手国の米国が保護貿易的な政策を打ってきている中、トルドー首相の基調講演は、貿易相手国の多様化を推進している連邦政府からの強いメッセージとなった。

(酒井拓司)

(カナダ)

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