ロボットが農作業を行う水耕栽培野菜、売れ行き好調

(米国)

サンフランシスコ発

2019年05月21日

ロボットが農作業を行う野菜の水耕栽培のスタートアップ、アイアン・オックス(本社:カリフォルニア州、2015年設立)は5月2日、サンカルロス市(注)の食料品スーパー、ビアンチニーズ・マーケットで同社栽培の野菜を販売していると発表した(「ザ・バージ」5月2日)。

アイアン・オックスは2018年10月、米国初となるロボットが主な農作業を担う室内水耕栽培施設をサンカルロス市に開設。敷地面積8,000平方フィート(約743平方メートル)で、葉野菜を年間約2万6,000把生産する規模だ。ロボットが行う作業は、アームで野菜をつかんで別の容器へ移し替えることと、野菜とその下に水が入った800ポンド(約363キログラム)のトレーを施設内で運搬することの2種類。種まきや収穫後の包装などは人間が行う。同社はこれら2種類のロボットが協業できるようソフトウエアも開発し、窒素レベルや温度、ロボットの位置など、施設内を監視して必要があればロボットや人間に注意を促す。

写真 アイアン・オックス栽培施設内で稼働するロボット。写真右:アームで野菜をつかみ別の容器へ移し替える。写真左:トレーを施設内で運搬している(アイアン・オックス提供)

アイアン・オックス栽培施設内で稼働するロボット。写真右:アームで野菜をつかみ別の容器へ移し替える。写真左:トレーを施設内で運搬している(アイアン・オックス提供)

水耕栽培の利点は、(1)従来の農場よりも水の使用が90%少なくて済み、一般的な農場の1エーカー(約4,047平方メートル)当たり栽培量の30倍が可能、(2)年間を通して安定した供給が可能で、季節に左右されることなく価格が変動する心配もないことだ。

ロボット農場に込める同社の狙いは、人手不足の解消と、農場から出荷先への距離を縮めることだ。人間の仕事を奪うことが目的ではなく、労働不足を補いたいと同社は考える。

ビアンチニーズ・マーケットのサンカルロス店は2月に販売を開始しており、商品の包装や供給方法についてアイアン・オックスに情報提供している。アイアン・オックスの栽培施設が店からわずか約1キロの近さにあることも、消費者に対して大きなセールスポイントだとしている(「サンフランシスコ・クロニクル」紙5月2日)。

アイアン・オックスが同店に卸す野菜は現在、レッドソレル(和名:スイパ)、バジル、ベビーレタスの3種類。店頭での価格は、レッドソレル1パック2オンス(約57グラム)入り2.99ドル、バジル1パック2オンス入り2.99ドル、ベビーレタス1パック(4玉)入り4.99ドルと、やや高めの設定ではあるものの、無農薬野菜とほぼ同じ価格帯だ。売れ行きは上々で、アイアオン・オックスからの仕入れ量を増やしているという。ジェトロが取材した5月14日、同店ではアイアン・オックスの3商品全てが売り切れとなっていた。

(注)サンフランシスコ市からサンフランシスコ半島を約39キロ南下したところに位置する。シリコンバレーの一部に含まれる。

(田中三保子)

(米国)

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