下院の超党派、判断期限迫る自動車追加関税に強く反対

(米国)

ニューヨーク発

2019年05月09日

1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく自動車・同部品に対する輸入制限的な措置の実施の有無をトランプ大統領が判断する期限が5月18日に迫る中、米国下院議会の超党派159人(共和党81人、民主党78人)の議員が5月8日、同措置導入の中止を求める書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)をクドロー国家経済会議(NEC)委員長宛てに送った。2018年7月18日にロス商務長官宛てに送られた、232条調査の停止を求める149議員による書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを超える署名数となった。今回の書簡の中で下院議員らは、自動車・同部品が「われわれの国家安全への脅威ではないと確信」「自動車産業、ひいては米国経済に損害を与えうる貿易制限措置の発動を控えるよう、大統領に忠告することを切望する」と訴えている。

これまでに、上下両院の有力議員(2018年6月1日記事参照)、自動車業界をはじめ主要ビジネス団体(2018年5月25日記事参照)、外国政府などから多くの批判や中止を求める要望がトランプ政権に寄せられてきた。中でも今回は、トランプ政権が2019年内の発効を求める米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)批准承認のかぎを握る下院議員の実に3分の1超の議員の声であり、簡単には無視できないと考えられる。

トランプ大統領は、条件次第(注)では最大180日間(11月14日まで)措置導入の判断を延長することができる。ブルームバーグの3月28日付記事によると、クドロー委員長は同日の会見で、トランプ大統領の決定は判断期限日よりも「長くかかるかもしれない」と、延長の可能性をほのめかしている。ワシントンの通商専門家は期限延長を予想するに足る理由として、(1)日本やEUとの貿易交渉で同措置を引き続きレバレッジとして使うことができる、(2)同措置の発動が中国との貿易交渉の妨げになることを好まない、(3)USMCAの年内の議会批准承認を困難にする可能性が高まる点を挙げている。

(注)対象品目の輸入制限措置が他国との協定の交渉を伴う場合、180日間延長できる。

(若松勇)

(米国)

ビジネス短信 3547a6e0a576c27e