第1四半期の経済指標は減速傾向

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年05月20日

ボルソナーロ政権発足後最初の3カ月間の経済指標に減速傾向がみられる。ブラジル地理統計院(IBGE)による鉱工業生産指数は、2019年第1四半期(1~3月)に前年同期比2.2%減となった(図1参照)。業種別にみると、鉱業が7.5%減と大幅な減少になっている。これは、1月に起きた鉱山ダム決壊の影響が大きい。鉄鉱石大手ヴァーレの第1四半期決算をみると、同期の鉄鉱石生産量は7,287万トンと前年同期比11.1%減だった。なお、製造業は1.4%減となった。情報機器・電子機器・光学製品が13.0%減、医化学・医薬品が10.6%減と2桁台の減少だ。一方で、増加したのは飲料(5.0%増)、石油・バイオ燃料派生品(4.2%増)などで、製造業25業種中5業種にとどまった。

図1 鉱工業生産指数の増加率推移(月別、過去12カ月累計)

同じくIBGEによる小売販売指数をみると、2019年第1四半期は前年同期比0.3%増、自動車・同部品と建築資材を含めた拡大指数では2.3%増と、プラスの傾向がみられる(図2参照)。医薬品・化粧品・香水(6.9%増)、自動車・同部品(8.3%増)など、一部の小売分野は増加を維持しているが、全体でみると四半期ごとの増加率は徐々に低下している。2018年第4四半期の前年同期比増加率は小売販売指数で2.2%増、拡大指数で4.4%増だった。

図2 小売販売指数の増加率推移(月別、過去12カ月累計)

ブラジル中央銀行の金融政策審議会(COPOM)は5月9日、政策金利(Selic)について年率6.5%で据え置きの決定をした。2018年3月に6.5%へ引き下げて以降、9回連続の据え置き判断で、市場の予想どおりの結果となった。IBGEが5月10日に発表した4月の拡大消費者物価指数(IPCA)の前月比増加率は0.57%と、3月の0.75%を下回った(図3参照)。COPOMも前日の会合で、インフレ率の指標は適切な水準で推移と指摘している。物価上昇抑制の一因として、IBGEでは依然として高い水準の失業率を挙げている。失業率は2019年第1四半期に12.7%と前期より1.1ポイント上昇した(図4参照)。なお、市中金融機関の予測をまとめた中銀フォーカス(5月10日付)で2019年のGDP成長率をみると、1.45%に引き下げられている。4週間前の予測値は1.95%だった。

図3 拡大消費者物価指数(IPCA)の増加率推移(前年同月比)
図4 四半期ごとの失業率推移

(二宮康史)

(ブラジル)

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