欧州議会選で欧州懐疑派が後退

(スペイン、EU)

マドリード発

2019年05月28日

5月26日に実施されたスペインの欧州議会選挙は、統一地方選挙と日程が重なったこと、カタルーニャ問題や極右台頭など政治に対する国民の関心も高まったことから、投票率は前回2014年から18.5ポイント伸び、64.3%となった。

中道左右両派が6割占める

政府発表の暫定結果によると、与党・社会労働党(PSOE)が得票率を前回より10ポイント弱伸ばし、4月の総選挙結果(2019年5月7日記事参照)をさらに上回る32.8%を得て、スペインに割り当てられた54議席のうち20議席を獲得した。他のEU主要国の中道左派勢力が軒並み議席を減らす中、PSOEは欧州議会で所属する中道左派の社会・民主主義進歩同盟(S&D)内のプレゼンスを高める。欧州議会の最大会派である中道右派の欧州人民党グループ(EPP)に所属する最大野党の民衆党(PP)は、総選挙からの流れで得票率を落とし(20.1%)、12議席だった。

両党を合わせると配分議席の6割を占め、後続の新興政党〔市民党(C’s、7議席)、ポデモス党(6議席)、ボクス(3議席)〕を大きく離し、2大政党の強さが依然健在であることを印象付けた。

EU懐疑派は後退

一方で、EU懐疑派は伸び悩んだ。緊縮財政反対を掲げる急進左派のポデモス・統一左翼連合は前回から議席が半減。国家主権の回復を主張する極右新興政党・ボクス(Vox)は今回初めて欧州議会に進出したものの、得票率は総選挙(10.3%)を下回る6.2%で3議席にとどまった。2大政党に票が流れたことが原因とされる。

カタルーニャ問題の影響で親EU、緑の党会派が伸長

スペインでも、親EU・リベラル派の「欧州自由民主同盟(ALDE)」や、環境保護派の緑の党・欧州自由連盟(Greens/EFA)会派が議席を増やした。リベラル系では、中道右派のポジションを固めつつある市民党のほか、カルラス・プチデモン前カタルーニャ州首相を中心とするカタルーニャ連合(JxC)系や、バスク民族主義党(EAJ-PNV)などの中道右派・民族主義連合が伸びた。緑の党会派は、同グループと連合する民族主義派の欧州自由同盟(EFA)に所属するカタルーニャ共和左派(ERC)などの得票増が寄与した。

この背景には、カタルーニャ独立運動による訴追を受け、逃亡または収監中の政治家を支援しようとする州内の世論の高まりがあるとされ、内政事情が多分に影響したようだ。

(伊藤裕規子)

(スペイン、EU)

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