与党、社会保障に重きを置いた総選挙マニフェストを発表

(インド)

ニューデリー発

2019年04月12日

インドの下院総選挙が4月11日から始まった。5月19日までの日程で7回に分けて実施され、5月23日に一斉開票される。これに先立つ4月8日、ナレンドラ・モディ首相率いる政権与党・インド人民党(BJP)は2019年の総選挙マニフェスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

同マニフェストでは、テロへの徹底対抗姿勢や軍事力の強化といった安全保障に加え、農家の収入倍増を目指した補助金の対象者拡大や小規模農家への年金制度の導入など、農家の社会保障の充実などを強調した。マニフェストの発表に際して、モディ首相は「国家主義、貧困層への福祉、安定した統治の3点に重きを置いた」と語った(「エコノミック・タイムズ」紙4月9日)。

経済面では、製造業振興策「メーク・イン・インディア」の継続、中小零細企業やスタートアップへの支援、減税、デジタル化などを重点項目として挙げた。ビジネス環境の改善策としては、会社法の改定や新たな産業政策の発表についても触れている。

2014年に行われた前回の総選挙の際のBJPのマニフェストは、インフレ対策、汚職撲滅、雇用創出などに焦点が置かれていたが、今回のマニフェストは、安全保障や社会保障を強調し、国民生活重視にかじを切ったものになった。この方針転換の背景には、BJPが産業界からの支持は得ながらも、大票田となる農民や低所得者層からの支持獲得に苦労していることがあるもようだ。

他方、野党最大勢力の国民会議派(コングレス)は、BJPのマニフェスト発表に先立つ4月3日、同党の2019年選挙マニフェストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表している。この中で、5,000万世帯の最貧困層に対して年間7万2,000ルピー(約11万5,200円、1ルピー=約1.6円)の現金を支給することを柱とした、最低収入保障制度の導入を掲げた。また、政府機関や公社などにある40万件あるとされる空席ポストを活用し、2020年3月までに新たな雇用を創出する方針も明らかにした。さらに、農家の債務の取り消しについても約束するなど、BJPが苦戦する低所得者層や農民から票の取り込みを急ぐ姿勢を示した。

(古屋礼子)

(インド)

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