英国のノー・ディール離脱は肉類・自動車関連製品の輸出に影響

(ポーランド、英国)

ワルシャワ発

2019年04月15日

4月10日の特別欧州理事会(EU首脳会議)において、英国が4月12日に合意なしに離脱するノー・ディールは回避された(2019年4月11日記事参照)が、英国のEUからのノー・ディール離脱の可能性は引き続き残ったままだ。ポーランド政府は1月に成立した2019年予算で、英国がEUを離脱することで増加するEU予算への拠出金増加への対応として、10億5,000万ズロチ(約304億5,000万円、1ズロチ=約29円)を確保した。テレサ・チェルビンスカ財務相は1月、ブルームバーグの取材に対し「ポーランドの予算はノー・ディール離脱にも、(英国がEUと何らかの合意を結んだ上で離脱する)秩序だった離脱にも準備ができている」と語っている。また3月には、ノー・ディールで英国が離脱した場合に備え、3本の法案を採択。英国国民のポーランド居住や就労に関する原則や、ポーランドにおける英国の金融機関の活動の原則などが規定された。

ノー・ディールで離脱する場合に英国が適用する暫定的な関税枠組み(2019年3月14日記事参照)を基にした、公的シンクタンクのポーランド経済研究所の試算(4月3日)によると、ノー・ディール離脱によりポーランドで輸出減少の影響に最もさらされるのは、肉類と自動車関連製品の2分野だ。農水産・食品分野では平均6.5%、全体の平均では2.1%の関税がポーランドの輸出製品に賦課され、英国への輸出額は2018年比で18億4,600万ズロチ減少(3.2%減)する可能性があるとする。また同研究所は、ノー・ディール離脱は、ポーランド国内で英国の輸出に直接・間接的に関連する産業で働く1万8,600人の雇用減少につながると試算している。

ポーランド民間経営者連盟「レビアタン」は2018年8月の発表の中で、英国に年間に入国する欧州のトラック200万台のうち、45万台がポーランドのトラックで、貿易量の減少や欧州大陸と英国の間のサプライチェーンの分断が、ポーランドの輸送業界に与える影響は大きいとしている。また、2019年1月の発表の中では、英国とEUの貿易にWTOルールに基づく関税が賦課される場合、商品(コモディティー)価格は20~25%上昇するとしている。

なお、ブレグジットをチャンスと捉える見方もあり、例えばマレク・グルバルチク海事経済・河川交通相は3月、ブレグジットによってポーランド向けの海上輸送貨物(ポーランドを最終目的地としないものも含む)が増える可能性を指摘している〔ポーランド通信(PAP)〕。

(深谷薫、ニーナ・ルッベ・ルビニスカ)

(ポーランド、英国)

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