ニューヨーク州、マンハッタンに全米初となる混雑課金を導入へ
(米国)
ニューヨーク発
2019年04月09日
ニューヨーク州は、マンハッタンの中心地区を通行する車両を対象として、新たに混雑課金を導入することを決定した。4月1日に承認された2019/2020年度州予算の関連法(歳入法)として制定された。全米初の取り組みで、2021年以降の導入を目指す。
2021年以降の導入目指す、地下鉄システム改善などに活用
新たに導入される課金は「中心業務地区通行料(Central Business District Tolling)」と呼ばれ、緊急車両や障害者輸送車両を除き、原則として、マンハッタン60丁目以南の地区を通行する全ての車両が対象となる。それぞれイースト川やハドソン川に沿って走るFDR(フランクリン・D・ルーズベルト)ドライブやウエストサイド・ハイウエーは対象外となる。
料金は、該当地区周辺に設置される自動料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)を通じて収集される。得られた収入は、長らく老朽化が指摘されてきたニューヨークの地下鉄システムの改善などに充てられる。これにより、財政難に苦しむニューヨーク都市圏交通公社(MTA:Metropolitan Transportation Authority)の安定財源となることが期待されている。
料金は時間帯などによって変動し、乗用車については1日1回のみ課金されることとされている。具体的な課金額や適用除外・ディスカウント対象などの詳細は、今後MTAの事業会社であるトライボロ橋・トンネル公社(TBTA:Triborough Bridge and Tunnel Authority)が、新たに設置される交通モビリティー審査委員会(Traffic Mobility Review Board)の勧告を受けて決定する。
なお、2017年10月にアンドリュー・クオモ州知事の下に設置された専門委員会「Fix NYC」の報告書(2018年1月)では、中心業務地区の交通渋滞解消を図り、MTAの財源確保につながる料金体系として、乗用車は1日当たり11.52ドル、トラックは25.34ドル、ハイヤーやタクシーは1乗車当たり2~5ドルの料金を課すことが提案されている。
クオモ州知事は、混雑料金の導入によって、ミッドタウンやロウワー・マンハッタンの住民を悩ませてきた交通渋滞や大気汚染の解消だけでなく、公共交通機関の維持・修繕に必要な資金調達にもつながると述べた。
全米都市交通担当官協議会のコリン・キスナー氏は、ニューヨーク市の決定は「他の都市で行われている(混雑料金に関する)話し合いの場において重要な先例とされるだろう」と指摘した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版4月1日)。一方で、隣州のニュージャージー州からは反発する声も聞かれる。同州のフィル・マーフィー知事は、料金設定次第では、鉄道事業者に対する十分な支援なしに利用者の鉄道依存度が高まるなど、意図せざる結果につながる懸念があると指摘した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版4月2日)。
(権田直)
(米国)
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