食品小売価格規制でアルコール飲料が高騰

(フランス)

パリ発

2019年04月15日

調査会社ニールセンは4月4日、フランスの1月26日から3月29日までの食品小売価格上昇率を発表した。最も売れている商品トップ100の価格を比較すると、ハイパーマーケット(注)で4.8%、スーパーマーケットで3.1%の上昇がみられた。食品全体の平均小売価格は0.1%の上昇にとどまり安定している一方、特に、ジン(8.8%)、ラム酒(8.6%)、ビール(7.3%)など、これまで集客商品として利幅をかなり抑えた価格設定にしていたアルコール製品の値上がりが顕著だった。

フランスでは、食品の不当廉売を禁じる小売価格規制が2月1日から施行されており、小売店は食品の仕入れ価格に物流コストを加えた額に対し、最低10%上乗せした小売価格を設定することが義務付けられた。食品の小売価格規制は、十分な収入が得られていない農業生産者の収入を確保し、流通業者の過度な価格競争を抑止するための措置として、「2018年10月30日付の農業と食品部門における商業関係の均衡、健康的、持続的で全ての人にアクセス可能な食品のための法律(通称:食品法)」に盛り込まれたことが背景にある。

ニールセンの調査結果は、大規模に商品を仕入れ、利幅を小さくした上で価格競争力を維持してきたハイパーマーケットなど大型小売店での商品トップ100の価格上昇が大きいことを示している。また、1月1日から販売価格の34%を超える値引きを明示しての特売(同価格での増量にも適用)や、サプライヤーとディストリビューター間の契約金額に基づく予想販売数量、および売り上げの25%を超える特売が禁止された。仕入れ価格や特売に関する規制措置は、実験的な措置として施行期間を2年間と限定している。

さらに、食品の販売促進の際の「gratuit(無料)」という言葉を禁止した。広告やチラシ、包装上に「gratuit(無料)」と記載することは違法となり、故意に法を犯したと裁判官が判断した場合、1万5,000ユーロの罰金となる。

ディディエ・ギヨーム農業相は4月12日、「食品法施行から3カ月、農業生産者に十分な収入を与えるという目的には達していない。もっと踏み込んだ施策が必要だ」と述べた。関係者を集めたフォローアップ委員会が4月17日に開催される予定だ。

(注)2,500平方メートル以上のスーパーマーケット。

(奥山直子)

(フランス)

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