ロシア政府、ウクライナに対し鉱物資源の禁輸措置を発動
(ロシア、ウクライナ)
欧州ロシアCIS課
2019年04月22日
ロシア政府は4月18日、ウクライナに対する既存の禁輸措置を拡大した。対象となったのはウクライナからロシアへの輸出に関し、原油・天然ガス輸送用の鋼管、紙、厚紙および包装容器、靴および衣類、ローダー類、ブルドーザー。ロシアからウクライナ向けの輸出については、石油や石油製品が禁輸対象に加えられ、石炭、ガソリン、ディーゼル燃料については7月1日から経済発展省による輸出許可制となる。
発表されたのは2019年4月18日付政府決定第460-25号で、既存の対ウクライナ禁輸製品(2018年12月29日付政府決定第1716-83号)に複数の品目を追加するもの。今回の措置で特徴的な点は、ロシアからウクライナ向けの輸出禁止・許可品目に原油、ガソリン、石炭など多くの鉱物性燃料が含まれていることだ(表1、2参照)。ウクライナの2018年の輸入実績(金額ベース、注1)は、全体(568億ドル)のうち鉱物性燃料(HS27類)が最大の23%(131億ドル)を占め、そのうちロシアからの輸入は1位となるシェア33.6%(44億ドル)だった(2位はベラルーシの19.3%、25億ドル)。
今回のロシアの禁輸措置によるウクライナ経済への影響について、専門家の見方は、ロシアからの輸入に依存していた鉱物性燃料の代替が可能かという点に絞られている。楽観的な識者は、ロシア産原油・石油製品、石炭は最終的にベラルーシ経由に置き換わる(注2)との見方だ。一方、悲観的な識者は、原油や石油製品の不足が発生し、アゼルバイジャンなど他国に頼ることになるが、全ての需要を賄うことはできずウクライナは経済に大きな打撃を被るとの見方だ。しかし、期間の長短はあるものの、鉱物資源など禁輸品目の供給は一時的に不安定になる、という点では一致しており、市民生活への影響が懸念される。
(注1)出所はITC Trademap(UN Comtrade Datebase)。
(注2)ベラルーシは石炭を産出しないが、2018年には30億ドルの石炭がウクライナ向けに輸出されており、全てロシア産と目されている。
(高橋淳)
(ロシア、ウクライナ)
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