5月8日の国民議会総選挙、有識者は与党の支持回復を予測

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年04月25日

5月8日に実施予定の国民議会総選挙を前に、ジェトロは4月17日、在南アフリカ共和国日系企業向けに「南ア政局セミナー」を開催した。今後5年間の国政を占う選挙となることから、その結果に国内外から注目が集まっており、30人超が参加した。

講師を務めた調査会社タビティの最高経営責任者(CEO)で、南ア政治に精通するネル・マレー氏は、与党・アフリカ民族会議(ANC)が得票率59~61%で勝利すると予測した。ANCは前回の統一地方選(2016年)で、全人種参加が認められた1994年の選挙以降で過去最低の得票率(53.9%)となった(2016年8月18日記事参照)が、汚職撲滅を掲げクリーンなイメージを築くシリル・ラマポーザ大統領への国民の支持が厚く、票を伸ばすとした。対立する野党が47党に細分化していることも、ANCにとって有利に働くとした(前回2014年の総選挙実施時は28党)。

統一地方選で主に都市部の若年層の支持を受けて得票率を伸ばした第1野党・民主同盟(DA)は、統一地方選(26.9%)から18~19%に低下すると予測した。その理由として、これまでDAはANCの汚職撲滅を掲げて支持を伸ばしてきたが、ラマポーザ大統領の就任により、党としてのメッセージ性が弱まったこと、党内の派閥抗争による弱体化、明確な連立候補がないことなどを挙げた。他方で、統一地方選で主に黒人若年貧困層の不満の受け皿として躍進した第2野党・経済的開放の闘士(EFF)は、若年層の支持をさらに集め、統一地方選の8.2%から10~12%まで上昇すると予想した。

マレー氏は、仮にANCの得票率が予想より低い55%程度にとどまった場合、ラマポーザ大統領は党内の派閥調整が必要となる。そのため、「土地改革」の改正法案(2018年8月7日記事参照)など、ポピュリスト的な政策を実施する可能性があると話した。

同国の憲法上、総選挙の実施後、議会の承認をもって大統領が選出される。ANCが単独過半数を獲得すれば、現在党首を務めるラマポーザ大統領が再選(2019年から5年間)となる見込み。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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