省エネ・省資源、少子高齢化時代の経済運営に言及、2036年までの長期財政予測を発表

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年04月15日

ロシア連邦政府は3月29日、2036年までの長期財政予測(2019年3月29日付連邦政府指示第558-r号)を承認した。この予測は、安定したマクロ経済条件の確保と国の社会経済発展戦略の達成に向けた税制・予算・債務政策の策定・実施を目的とし、財務省が作成。2018年5月7日付大統領令第204号「2024年までのロシア連邦発展の国家目標と戦略的課題」と、2024年までのロシア連邦政府活動と国家プログラムの基本方向性、2019~2021年の予算、税制、関税政策の基本方向性も勘案されている。

具体的な財政予測は添付資料のとおり。2019~2024年の間はウラル産原油価格を57.7ドルと想定しており、これに連動する石油ガス収入(注)により財政収支は黒字となるが、2025年以降は油価下落を見込んでおり、対GDP比の石油ガス収入は徐々に縮小する。一方で、非石油ガス収入(法人税、個人所得税、資産税、付加価値税、関税、物品税など)の対GDP比の拡大は、少子高齢社会による労働人口減少が進んでいくことから見込みにくい。このため対GDP比での歳出削減に努めるとともに、国債発行による財政赤字補填(ほてん)を進めるとしている。

長期財政予測に影響を与える要素として、人口問題、技術革新、世界の経済環境の変化を挙げている。人口問題については、ロシアで少子高齢化が進み、労働人口が減少していく中で、労働生産性が低下し、税収が減少する一方、高齢化の進展によって医療費や年金への支出負担が拡大していく。デジタル化の進展によって、金融、輸送、工業、小売りなどさまざまな産業分野に構造改革が起こり、労働人口減少を補うと予想。世界の経済環境変化に関しては、中国経済の減速や世界的な省エネ・省資源化によって、資源・エネルギーへの消費が減少する一方、米国が1バレル当たり35~45ドル以上の油価でないと難しいシェールオイル開発、同50~60ドル以上でないとペイしない深海・大陸棚開発に取り組んでいることから、油価は大きくは下がらないと見込んでいる。

今後のロシア経済の成長ドライバーとして、固定資本投資の活発化を掲げる。これに向け、インフラ整備を引き続き実施する方針だが、国の財政に余裕がないこともあり、官民パートナーシップ形式を基本とし、プロジェクトファイナンスや外国投資誘致、民間年金・保険基金の活用を推進していくとし、さらに、人的資本の発展拡大に向け教育への投資も惜しまないとしている。

今回の予測には、油価が低迷した場合のGDP成長率への影響シナリオも含まれており、1バレル40ドルであれば影響はないものの、40ドルから5ドル下落するごとに、1年間で約0.8ポイントの下振れが生じるとみている。

(注)主に鉱物資源採掘税と石油・天然ガスの輸出税による収入。

(齋藤寛)

(ロシア)

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