ベイエリア内の個人所得税を香港と同水準に

(中国)

広州発

2019年04月25日

財政部、国家税務総局は、「広東・香港・マカオグレートベイエリア個人所得税優遇政策に関する通知」(財税[2019]31号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを3月14日に発表した。

広東・香港・マカオグレートベイエリア(以下、ベイエリア)を構成する広東省の都市で業務を行う、海外(香港・マカオ・台湾を含む)のハイレベル人材・不足人材の中国での個人所得税について、香港の税率を基準として超過分の差額を補助する。適用対象となるハイレベル人材・不足人材の定義や補助方法は、広東省および深セン市が規定する。

対象地域は広東省広州市、深セン市、珠海市、仏山市、恵州市、東莞市、中山市、肇慶市。本通知の有効期限は、2019年1月1日から2023年12月31日までとなっている。

個人所得税の現行の税率は、累進課税により中国が3~45%、香港が2~17%(もしくは標準税率15%のうち税額が低い方。累進税率と標準税率は課税所得の算出方法が異なる)となっている。

深セン市と珠海市の制度を拡大

広東省では以前から、深セン市の前海深港現代サービス業合作区(以下、前海)と珠海市の横琴新区(以下、横琴)で、類似の個人所得税補助が実施されてきた。

前海では、海外の高度人材・不足人材について「深セン市前海深港現代サービス業合作区海外ハイレベル人材・不足人材個人所得税財政補助弁法」により、個人所得税率が15%を超えた部分について補助金を与えるとされている。横琴では、「珠海市横琴新区で業務を行う香港・マカオ住民の個人所得税差額補助暫定管理弁法」により、香港住民には15%、マカオ住民には12%の個人所得税率が適用される。今回の通知は両区の制度を基に、ベイエリア各都市に支援策を拡大するものとなる。

実務上の運営が課題

通知に関する財政部および国家税務総局の記者発表では、前海や横琴で実施されている個人所得税優遇策は「通知の実施日付(2019年1月1日)で廃止する」としている。香港のどの税率を採用するかは通知に記載されていないが、現在、前海と横琴では香港住民にはいずれも標準税率の15%が適用されている。今回も同様であれば、横琴のマカオ住民にとって負担増となる恐れがある。

また、実務上の運営も課題となる。前海の弁法に基づき、実施からの4年間(2019年1月時点)で補助金を受給した人は延べ453人にとどまっている。深セン市政府も、企業や個人から「申請の手続き、必要資料、補助金の支給に関する問題提起があった」とし、1月に弁法を改定したばかりだ。円滑な実施には制度面だけでなく、実務ノウハウの共有も必要となる。

(河野円洋)

(中国)

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