米国土安全保障省、南部国境が緊急事態との声明を発表
(米国)
ロサンゼルス発
2019年04月04日
米国国土安全保障省(DHS)のキルステン・ニールセン長官は3月29日、南部国境が緊急事態にあるとの声明を発表した。声明では、DHSが国境の安全を確保する一方で、人道的見地から病気の子供たちなどを保護していること、子供が家族を呼び寄せることができる米国の移民制度を密輸業者や人身売買業者が「フリーチケット」と称して悪用し子供を1人旅させていること、国境への追加人員配置の影響で他の任務に支障が出ていること、状況改善のために議会に緊急立法措置を要求したこと、などに触れている。
メキシコとの国境には、カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州が接しており、その長さは1,933マイル(約3,100キロ)、検問所は24カ所に及ぶ。2019会計年度(2018年10月~2019年9月)に入り、南部国境で税関国境保護局(CBP)に捕まった人数は、2014会計年度以降、最も速いペースで増加している(添資料参照)。
トランプ大統領は同日に自身のツイッターで、「メキシコが米国へ向かう不法移民を直ちに止めない場合、翌週にも国境を閉鎖する」と述べた。メキシコとの国境閉鎖の具体的な実施時期、期間、閉鎖の対象などの詳細は不明だが、続く3月30日のツイッターでは「国境閉鎖によってメキシコからの薬物も止めることができる」とも述べた。
産業界から国境閉鎖に反対の声
全米商工会議所は4月1日、トランプ政権の国境に関する懸念に理解を示しつつも、国境閉鎖は「米国の家族、労働者、農家、製造業者に深刻な経済的損害を与える。米墨間の貿易は1日に17億ドルを超え、毎日50万人の労働者、学生、買い物客、観光客が合法的に国境を越えている」と反対の声明を出した。
非営利団体センター・フォー・オートモーティブ・リサーチ(CAR)のクリスティン・ジチェク副代表(産業・労働・経済担当)は「USAトゥデー」紙(電子版4月2日)へ寄稿し、米国の(自動車)生産者は、米墨間の1,130億ドル以上の輸入と360億ドルの輸出に依存していると述べ、メキシコとの国境が封鎖され全ての貿易が止まれば「米国の自動車および部品の生産と雇用に直ちに壊滅的な影響を与えるだろう」と主張した。
「ニューヨーク・タイムズ」紙(電子版4月1日)は、農作物への影響として、米国がメキシコに依存しているアボカド、トマト、イチゴ、ブドウ、マンゴー、加工食品、ビール、メキシコが米国に依存している大豆、トウモロコシ、乳製品、鶏肉、牛肉などが不足し、価格が高騰する可能性があると報じた。
(北條隆)
(米国)
ビジネス短信 6e1ad62a6c623ba3