USMCAでの交渉成果を強調、2019年外国貿易障壁報告書(カナダ編)

(米国、カナダ)

米州課

2019年04月05日

米国通商代表部(USTR)が3月29日に発表した2019年版外国貿易障壁報告書(NTE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、カナダに関する記述が前年から1ページ増えて9ページになった。構成は(1)貿易概観、(2)貿易協定、(3)輸入政策、(4)貿易の技術的障壁(TBT)・衛生植物検疫(SPS)障壁、(5)補助金、(6)政府調達、(7)知的財産権保護、(8)サービス障壁、(9)デジタル貿易および電子商取引の障壁、(10)投資障壁の10項目で構成されている。

2018年の米国の財の対カナダ貿易赤字は、前年比15.9%増の198億ドルになった。カナダは米国最大の財の輸出相手国で、2018年の輸出額は2,987億ドルと5.8%増加したが、カナダからの輸入額も3,185億ドルと6.4%増加した。

今回のNTEでは、2018年の交渉の成果として、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の署名を挙げた。具体的な事例としては、カナダが乳製品の供給管理制度におけるクラス6とクラス7の廃止や、米国産小麦に対する差別的な格付けを改めること、米国のテレビ局がスーパーボウル中継をカナダで放映する際にカナダ人向け広告に切り替えることを禁じた規則を撤廃すること、ブリティッシュ・コロンビア州における同州産以外のワインの販売方法の差別的な扱いを改めることで合意したことなどを取り上げた(2018年10月2日記事参照)。

新たな障壁としてカナダの報復関税措置やひも付きカバーの安全性に関する規制案などを指摘

一方、新たな障壁としては、米国の通商拡大法232条に基づく追加関税に対するカナダの報復関税措置や、カナダで販売されるひも付き窓カバー製品の安全性に関する規制案、一定量以上のコンテナでの新鮮果物・野菜の輸入禁止措置に関する大臣免除発行手続きが盛り込まれた。カナダは米国への報復関税措置として、166億カナダ・ドル(1兆3,944億円、1カナダ・ドル=約84円)相当の米国産の農産品や工業製品に対し、10~25%の追加関税を課しているが(2018年7月2日記事参照)、今回の報告書で、米国はカナダに対して、米国の労働者や企業を罰することを目的とした不当な報復を行うのではなく、鉄鋼やアルミニウムの世界的な供給過剰問題に米国とともに取り組むよう求めている。

NTEは、総論編と各国・地域編から成り、総論編は2019年4月5日記事参照。

(中溝丘)

(米国、カナダ)

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