カナダ、対米輸入に対する報復関税を発動

(カナダ、米国)

トロント発

2018年07月02日

カナダ政府は6月29日、米国によるカナダの鉄鋼およびアルミニウム製品への関税賦課に対する報復措置として、米国から輸入される鉄鋼やアルミニウム製品、その他の品目など計166億カナダ・ドル(約1兆3,944億円、Cドル、1Cドル=約84円)相当に上る関税を7月1日から課すことを発表した。

カナダ政府は5月31日に同様の声明を発表し、その後15日間にわたって今回の措置に対するカナダ国民との協議期間を設定していた(2018年6月4日記事参照)。今回発表された輸入関税賦課措置のリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと5月31日発表のリストを比較すると、ステンレス鋼のフラットロール製品(HSコード7219)やアルミニウム線(7605)、電気制御用または配電用の盤・パネルなど(8537)、自動調整機器(9032)など一部の品目がリストから除外されているが、報復措置の規模に変更はない。

カナダ政府はさらに、カナダ国内の鉄鋼・アルミニウム産業や労働者の利益を守るためとして、総額20億Cドルに上る包括的支援措置を発表した。具体的には、(1)労働者の解雇を避けるためのワークシェアプログラムの38週間の延長、(2)州や準州の職業訓練プログラム予算の拡充、(3)影響を受けた企業に対する流動性支援、(4)カナダの鉄鋼とアルミニウム産業の競争力の下支えやサプライチェーンのさらなる統合を支援するための戦略的イノベーション基金を通じた最大2億5,000万Cドルの拠出、(5)EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)や包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆるTPP11)などの新たな貿易協定を活用した輸出先の多角化を支援するための今後5年間で5,000万Cドルの支出、などとなっている。

フリーランド外相は声明で、「カナダの鉄鋼およびアルミニウム製品に対する米国の関税賦課措置は保護主義的であり、かつWTOや北米自由貿易協定(NAFTA)のルールに反している。われわれの対抗措置は不本意なものだが、米国がカナダへの関税をやめない限り、自国の産業、労働者、地域社会を守るためには、ほかに選択肢がない」と述べるとともに、米国との紛争に対する真の解決策は、「米国がカナダ産の鉄鋼とアルミニウム製品に対する関税賦課を撤回することだ」と強調した。

(伊藤敏一、シェイマス・フレイム)

(カナダ、米国)

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