2国間FTAも視野に協議中、英国の合意なきEU離脱の影響

(メキシコ、英国、EU)

メキシコ発

2019年04月22日

4月10日の特別欧州理事会(EU首脳会議)で英国のEU離脱(ブレグジット)の期日を条件付きで最長10月31日まで再延期されたことで、英国の合意なき離脱(ノー・ディール)は当面の間、回避された(2019年4月11日記事参照)。引き続き可能性の残るノー・ディールによるメキシコへの影響について、ジェトロは4月9日、メキシコ経済省欧州・アジア局長のフェルナンド・ラバニエゴス氏にヒアリングを行った。

同氏は「経済省としてはノー・ディールに対して公式な声明を発表していないが、メキシコはEUと自由貿易協定(FTA)を結んでいるため、英国が合意なくEUを離脱した場合、FTAの特恵関税を受けられなくなり、両国の貿易に影響するのではと懸念している」と指摘した。また、2国間でのFTAについて、英国政府と既に非公式に協議を開始しており、原産地規則や市場アクセスなどのテーマで意見交換を実施している、とも語った。さらに、2国間FTAが発効されるまでの一時的な貿易協定についても、非公式な意見交換を開始しているという。なお、英国が環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に加盟する可能性については、現時点で考慮していない、とのことだった。

英国に輸出をしているメキシコ進出日系企業に、英国の合意なきEU離脱の影響についてヒアリングを行ったところ、ある自動車部品メーカーから「英国への輸出については縮小傾向にあり影響は限定的なものの、英国経由でEUに輸出するオペレーションの場合、英国とEU間の国境・税関の復活による深刻な渋滞の発生により、輸送費が高騰する可能性がある。併せて、EU側での在庫の積み増しにより倉庫スペースの不足、保管料の増加などのコスト増が見込まれる」との回答があった。

貿易額でみると、英国はメキシコにとって20番目の貿易国で、輸出額では13番目に大きい。メキシコからは主に金、自動車部品、ビール、データ処理装置などを輸出しており、英国からは主に乗用車、ウイスキー、ガソリンエンジン、医薬品などを輸入している。ただし、2013年から拡大を続けていた往復貿易額は、2016年をピークに減少している。貿易収支では、2013年以降、2016年を除き、メキシコ側の貿易赤字となっている(図参照)。

図 英国との貿易額の推移

(岩田理)

(メキシコ、英国、EU)

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