欧州委、ノー・ディールの公算大と警鐘

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年04月01日

欧州委員会は3月29日、英国のEU離脱(ブレグジット)問題で、英国議会(下院)が離脱協定案を3度否決したことを受けて(2019年4月1日記事参照)、「4月12日に合意のない離脱(ノー・ディール)となるシナリオの可能性が高い」との声明を発表した。ノー・ディールの場合、ブレグジットに伴う激変緩和のための移行期間を含めた離脱協定の恩恵はないと指摘。個別分野ごとの取り決め(mini-deals)は選択肢にないとして、影響を受けるEUの企業・市民に警鐘を鳴らした。

農産・食品産業界からEU側の緊急措置は不十分との声も

今回の声明で、欧州委は英国議会の否決について「遺憾」との見解を示し、3月22日の欧州理事会決定(2019年3月22日記事参照)に基づいて、ブレグジット期日延期は4月12日までとした。欧州委は、EUとして英国が4月13日午前0時(中央ヨーロッパ時間)にノー・ディール状態で離脱する事態を想定し、これに向けた準備は完了(2019年3月26日記事参照)していることも付言した。

しかし、欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体であるCOPA-COGECAと、欧州の食品流通事業者で構成される欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)、欧州の食品・飲料事業者の産業団体フード・ドリンク・ヨーロッパの3団体は3月28日付の声明で、「欧州の食品・飲料のサプライチェーンの断絶を回避するには、追加措置が必要」との見解を明らかにしている。3団体は、ノー・ディール状態でのブレグジットを想定した、欧州委のこれまでの緊急対策を支持するとしたが、「欧州の農産・食品産業にノー・ディールがもたらす破滅的な影響に備えるためには、追加措置が必要」と指摘。3団体は特に食品安全と動植物衛生措置(SPS)に関わるEUと英国の相互承認などを含めて、鮮度が重要な農産・食品に関わる暫定的な簡易通関措置の検討を求めている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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