欧州議会、次回議会選挙の最新見通しを公表

(EU)

ブリュッセル発

2019年03月04日

欧州議会は3月1日、5月23~26日に予定されている次回の欧州議会選挙(2018年5月28日記事参照)の最新予測を公表した。EU懐疑派の台頭も見込まれ、現在、欧州議会で「与党」を形成している中道右派の「欧州人民党(EPP)グループ」や中道左派の「社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D)」に厳しい見通しだ。

現在の欧州議会勢力に対する不満を投影

欧州議会によると、今回の予測は、2月末までに行われたEU加盟国の世論調査機関などによる最新の調査結果に基づいている。3月に英国がEUから離脱(ブレグジット)する前提で、議員定数を現在の751から705に削減(2018年1月26日記事参照)、政党・政治勢力は既存会派を前提に区分し、現時点で会派に属さない政治勢力は「その他」に分類している。

今回の最新予測によると、最大会派であるEPPは現時点の保有議席217から36議席失い、181議席となる見通しだ。EPPと議会運営上、実質的に連立を組むS&Dは現有の186議席から135議席(51議席減)に縮小する見通しで、合計しても議会の過半数に届かないという難しい状況が予測されている。現在、英国選出の議員は、EPPは2議席だが、S&Dでは英国・労働党系議員が19議席を占める。ブレグジットによる定数減などの要因を除外して考えても、EPPとS&Dはそれぞれ30議席を超える議席を失う公算で、現在の「政権与党」勢力にとって厳しい見通しとなった。

このため、安定的な議会運営のためには、両党以外の第三勢力との連立を模索する必要が生じる。第三勢力の中では、比較的穏健なリベラル政党「欧州自由民主同盟(ALDE)」が最大会派になる見通しで、次回選挙では75議席(現有68議席)を獲得するとみられている。他方、現時点で両党に続く第三党を形成する保守系の「欧州保守改革グループ(ECR)」は現有75議席のうち19議席を英国・保守党系議員が占めるため、ブレグジットによる打撃が深刻で、今回の予測では46議席(29議席減)まで勢力を縮小する見通しだ。

躍進または善戦が予測されるのは、EU懐疑派の代表格と目されている民族派・極右グループ「国家と自由の欧州(ENF)」で現有の37議席を59議席(22議席増)まで伸ばすとみられるほか、ブレグジットを主導したナイジェル・ファラージ議員が所属する「自由と直接民主主義の欧州(EFDD)」も、現有の41議席からの落ち込みを2議席にとどめ、39議席確保の善戦が予測されている。EFDDの現在の最大勢力は17議席を占める英国系議員だが、これらの議席消滅後もドイツ(「ドイツのための選択肢(AfD)」)やイタリア(「五つ星運動」)などでEFDD所属議員が勢力を拡大すると見込まれる。

なお、欧州議会は1回目の選挙予測を2月18日に公表している。EPPの獲得議席数は今回、さらに下方修正(第1回予測から2議席減)された。欧州議会では、選挙直前までこうした見通しを更新・開示するとしている。

(前田篤穂)

(EU)

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