香港の2018年成長率は3%、減速傾向が鮮明に

(香港)

香港発

2019年03月07日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)統計処は2月27日、2018年度第4四半期および2018年通年のGDPを発表した。香港の名目GDPは2兆8,453億1,700万香港ドル(約39兆8,344億円、1香港ドル=約14円)で、香港政府統計処が公表している香港ドルと人民元間の為替レートで換算すると2兆4,000億9,869万元となり、深セン市の名目域内総生産(GRP)(2兆4,221億9,800万元、約41兆1,774億円、1元=約17円)を約221億元下回った。深セン市の経済規模が香港を上回ったのは初めてで、深セン市は、中国政府が推進する地域発展計画の「広東・香港・マカオグレートベイエリア(粤港澳大湾区)」で最大の経済規模を有する都市となった。

個人消費が成長を牽引

2018年の香港の実質GDP成長率は3.0%と、前年より0.8ポイント低下した(図1参照)。実質GDP成長率を需要項目別にみると、GDPの68.4%を占める個人消費が5.6%増と、前年(5.5%増)に引き続き好調だった。政府消費を含めた消費のGDPに対する寄与度も4.2ポイントに上昇した。耐久消費財および非耐久消費財がともに2桁増となり、特に同年上半期の個人消費拡大が寄与した。また、香港市民以外の香港での消費が8.2%増となり、香港への観光客数増加(11.4%増)が奏功した。GDPの20.1%を占める固定資本形成は2.2%増と前年より0.7ポイント減速し、GDP成長率に対する寄与度も0.3ポイントにとどまった。

図1 香港の実質GDP成長率および需要項目別寄与度の推移

外需では、財輸出が3.5%増と前年(6.5%増)より3.0ポイント低下した。サービス輸出は4.9%増で前年から2.0ポイント伸びた。旅行サービスが8.3%増となったのをはじめ、金融サービスも6.0%増と好調だった。財・サービス貿易の純輸出のGDP成長率に対する寄与度はマイナス1.4ポイントとなった。

四半期ベースでみると、第1四半期(成長率:4.6%)以降の香港経済の減速傾向は鮮明だ(図2参照)。2018年第4四半期のGDP成長率は1.3%と、3四半期連続で成長が鈍化した。特に固定資本形成が前年同期比で5.4%減、財輸出が0.2%減となったことが響いた。需要項目別に寄与度をみると、消費支出は2.5ポイント、固定資本形成がマイナス2.6ポイント、純輸出は1.5ポイントだった(図2参照)。

図2 香港の実質GDP成長率および需要項目別寄与度の推移(四半期ベース)

2019年の成長率予測値は2~3%

香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は2月27日に行った2019/2020年度(2019年4月~2020年3月)の財政予算案に関する立法会(国会に相当)での演説において、「世界経済の先行きは不透明」「今後、米中貿易摩擦が悪化する場合は香港経済に悪影響を及ぼす」などとした上で、2019年のGDP成長率を2~3%と予測した。

(吉田和仁)

(香港)

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