全人代で2019年も増値税率引き下げの方針を発表

(中国)

北京発

2019年03月15日

3月5~15日に開催された第13回全国人民代表大会(全人代)第2回会議において、李克強首相が「政府活動報告」で(以下、報告)、2019年に取り組む重点10分野について発表した(2019年3月15日記事参照)。

2018年の重点分野(9項目)の筆頭は「供給側(サプライサイド)の構造改革を踏み込んで推進する」だったが、2019年の重点分野の筆頭には「引き続きマクロコントロールを革新し充実させ、経済の動きを合理的な区間(レンジ)内に確実に保つ」が挙げられ、財政・金融・雇用政策といったツールを活用して、マクロ政策の逆周期機能(周期的な経済の変動を緩和する機能)を発揮させるとした。雇用優先政策を初めてマクロ政策として位置付けたことと併せて、2019年は経済の安定をより重視する姿勢をにじませた。重点分野第1項目の取り組みとしては、大規模な減税の実施、企業の社会保険料負担の引き下げ、減税・費用削減の確実な実行、企業の資金調達難・資金調達コスト高の緩和、地方政府債券の機能の有効な発揮、多くのチャンネルを通じた雇用の安定・増加が盛り込まれた(2019年の重点分野の詳細については添付資料参照)。

増値税率引き下げなどで約2兆元の減税・費用削減を実現

減税策では、2018年に続いて増値税率をさらに引き下げる方向性が示された。製造業などの業種については現行の16%から13%に、交通運輸業や建築業などの業種については現行の10%から9%に引き下げる。現行6%の税率については変更しないが、各種サービス業に対する控除などの関連措置を実施し、全ての業種の税負担が減少するようにする。また、税率の現行3段階から2段階への簡素化を引き続き推進する。

社会保険については、都市労働者の基本養老保険の企業負担比率を引き下げるほか、機構改革によって税務部門が社会保険料の徴収も担うようになった背景を踏まえ、零細企業の実質負担が増加しないよう、税務部門が勝手に過去の未払い分をまとめて徴収するなどの方法を取ることを禁じた。上記の措置などを通じて、計約2兆元(約34兆円、1元=約17円)分の税・社会保険などの負担を軽減する。減税などによって発生する歳入減少については、支出の削減や節約などで補うとした。

そのほか、雇用面では、農村貧困人口や都市失業者を雇用した企業に対する税の減免や

職業技能訓錬への補助、現代職業教育への支援策などが打ち出された。雇用対策に加え、高技能人材育成の側面を有する施策も盛り込まれている。

(小宮昇平)

(中国)

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