ロシアで民法上のデジタル財産権が明確化

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年03月26日

プーチン大統領は3月18日、ロシアの民法典に定める財産権の対象に「デジタル権」が含まれることなどを追記する一部改正法案に署名し、改正法は同日に公示された。施行は2019年10月1日から。改正により、ロシア国内で仮想通貨を含む暗号資産が民法上の保護の対象として明確化されるほか、小売り、銀行、保険などの現場でも、遅れていた電子化が進むこととなる。

署名されたのは連邦法第34号-FZ「ロシア連邦民法典第1章、第2章および第3章1124条の変更について」(2019年3月18日付)で、民法上での財産権の対象を定める第128条に「デジタル権」が新しく追記された。各財産権の内容を列記する条文群には第141の1条が追加され、同条の第1項では「デジタル権」の内容について、「デジタル権と認められるのは、法令の中で称される債権債務の権利やその他の権利で、その行使内容、条件は法律が定める基準を満たす情報システムの各規則に従って定められる。譲渡、貸与、担保その他を含むデジタル権の行使、処理もしくは権利行使の制限は、第三者への照会を伴わない情報システムにおいてのみ可能とする」と定めている。第2項では「他の法律で定めがない限り、デジタル権の所有者は情報システムの規則に従ってこの権利を処理することができる者を指す」とし、第3項では「取引に基づくデジタル権の移行は、同デジタル権に関する義務を負う者の同意を必要としない」と規定している(注)。民法典第454条に定める売買契約の対象となる財産権の範囲についても、「デジタル権」が追記された。

今回の改正では、急速に拡大する電子商取引や役務提供契約の締結事務の電子化(効率化)に対応する内容も含まれている。民法典第493条で定める小売り(売買)契約の成立時期について、売り手が発行するレシートもしくは領収書に「電子的なもの」を含める。インターネット上の商品展示は、明示的にサンプルである旨を記載していない限り、小売り契約のオファー(提示)と見なされる(第494条2項)。また、銀行での普通口座開設契約や、保険契約も、電子形式での締結が可能となる(第860の2条、第940条)。

なお、今回の改正法の施行日である2019年10月1日以前に発生した法的関係についても、施行日以降に発生した権利および義務については、改正法の規定が適用される。

(注)日本語訳は仮訳。

(高橋淳)

(ロシア)

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