欧州委、ブレグジットをめぐる在英自動車産業の苦悩に言及

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年03月14日

欧州委員会のフランス・ティーマーマンス第1副委員長は3月13日、欧州議会・本会議で演説し、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国産業界の混乱に言及。特に日産自動車、BMWなど英国に生産拠点を置く自動車メーカーの問題を取り上げ、彼らの苦悩に耳を傾けたことがあるのか、とブレグジットを推進した英国の政治家を名指しで批判した。

EU幹部が異例のブレグジット推進派批判

ティーマーマンス第1副委員長は3月21、22日に予定されている欧州理事会(EU首脳会議)に向けた欧州議会・本会議の準備会合に、欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長の代理として臨んだ。ブレグジット推進派の英国の政治家が英国に生産拠点を置く自動車メーカーの労使がどんな厳しい状況に置かれているのか、彼らの意見を聞いたことがあるのかと厳しい口調で指摘した。

同第1副委員長は「(ブレグジット推進派の政治家は)日産のサンダーランド事業所の労働者と対話したことがあるのか」「(英国を代表する小型車『ミニ』を生産するBMWの)オックスフォード事業所の従業員たちに対し、『あなたの仕事よりも、私が求める(英国のEUからの)自由の方が重要なのだ』『ノー・ディール(合意なき離脱)の場合に、BMWがどのような経営判断を下すかは知っているが、あなたの仕事がどうなるかよりも、ノー・ディールでもブレグジットの方がはるかに重要だ』と語る勇気があるのか」とブレグジット推進派を強く糾弾した。

同第1副委員長は北アイルランド問題にも触れ、「彼らは1998年以降、平和を取り戻した(北)アイルランドを訪れて、『あなたたちの平和や安定よりも、私の夢物語の方がもっと大事だ』『ノー・ディールの結果、北アイルランドに厳格な国境管理が復活しても、私は甘んじて受け入れる』と語る勇気があるのか」と問いただした。

なお、ティーマーマンス第1副委員長は5月の欧州議会選挙(2019年3月4日記事参照)に向けて、中道左派社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D)から欧州委員会の次期委員長候補として指名されている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

ビジネス短信 637ea641d01be2cf