上海市、2019年の成長目標を6.0~6.5%に引き下げ

(中国)

上海発

2019年02月04日

上海市の応勇市長は1月27日に開かれた上海市第15回人民代表大会(市議会に相当)で、2019年の施政方針に当たる政府活動報告を行った。2019年のGRP(域内総生産)実質成長率の目標は「6.0~6.5%」と定め、2018年の実績(6.6%)をやや下回る水準だが、研究開発(R&D)費をGRPの約4%、環境保護費を約3%相当に引き上げるなど、質の高い成長とグリーン経済を重視する発展モデルを示した。

今年度の4大任務としては、中国(上海)自由貿易試験区の拡大、長江デルタ一体化発展戦略の実施、2回目となる中国国際輸入博覧会の開催、新たな株式市場「科創板」の創設を挙げた。上海市は今後、ハイテク・ベンチャー企業向けの「科創板」を上海証券取引所に併設させ、株式発行の登録制度も試験的に導入していく方針だ。

上海市はまた、情報化社会をさらに加速させるため、特に第5世代移動通信システム(5G)ネットワークの構築に力を入れる。5GネットワークやIoT(モノのインターネット)の構築を注力するとともに、人工知能(AI)を教育や医療衛生、高齢者・障害者福祉、交通、環境保護などの領域に応用していくという。

大半の地域で目標を引き下げ

上海市の2018年の成長目標は6.5%前後だったが、2019年目標の下限値は6.0%に設定された。全国的にみても、目標を引き下げる省・自治区・直轄市が多い(表参照)。米国との貿易摩擦の影響が顕在化している中、企業の投資意欲や個人消費に影響が出始めており、中国の景気減速への懸念が広がる。

表 中国各省市の2018~2019年経済成長目標の比較

一方、上海市の2018年の1人当たりGRPは既に2万ドルを突破しており、若者を中心に質の高い商品を求める傾向が年々高まっている。「上海っ子」の購買力をビジネスチャンスに生かす戦略が求められよう。

(劉元森)

(中国)

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