燕三条のキッチン用品などをテスト販売、EPA活用に商機

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年02月19日

ジェトロは1月18~31日に、クアラルンプールの日系商業施設のイセタン・ザ・ジャパン・ストアにおいて、金属加工業が盛んな新潟県燕市および三条市のキッチン用品、テーブルウエア、工具、園芸用品など10社・98品目のテスト販売を実施した。燕三条地域としてのマレーシアでの展示、販売およびブランド浸透の試みは初めてとなる。

1月31日には、マレーシア貿易開発公社(MATRADE)、小売店バイヤー、レストラン・カフェの経営者を招いたワークショップを開催し、燕三条地場産業振興センターの理事長を務める國定勇人三条市長が、産地と製品の特長をアピールした。特に、長い歴史に裏打ちされた金属加工技術、そこにデザイン性・ストーリー性と取り込む顧客アプローチ戦略を強調した。

写真 燕三条地域を紹介する國定理事長(ジェトロ撮影)

燕三条地域を紹介する國定理事長(ジェトロ撮影)

燕三条地域の事業者2社も、自社製品のプレゼンテーションを実施した。キッチン用品製造のオークスは、油を使わず「蒸す」と「焼く」を同時に行う新たな調理方法を提案する「スチームグリルパン」や、蜂蜜が垂れないスプーンなどを、金属カトラリー(食卓用のナイフ・フォーク・スプーンなど)製造の山崎金属工業は、ノーベル賞授賞式の晩さん会でも使用実績のあるカトラリー類などを紹介した。

テスト販売用製品の輸入を手掛けたWAコンセプトのオン・チン・ウェイ社長は、日本・マレーシア経済連携協定(JMEPA)の活用(注)による効果を説明した。今回の製品については、EPAを活用すると全て無税で輸入でき、その分、販売価格を抑えられる(表参照)。また、日本商工会議所が発行するマレーシア向け原産地証明書は、ほとんどが化学品や機械・部品の輸出に活用されており、「日用品にはEPA活用のチャンスがある」と説明した。

表 主なキッチン用品、テーブルウエア類の関税率比較

「ヘルシーな調理ができるスチームグリルパンが気に入った」と話す参加者は、EPAを活用した場合と活用しない場合の価格差を見て、「より手が届きやすい印象を受け、買いたいと感じた」と関心を示した。別の参加者は「ハイエンドでデザイン性の高いキッチン用品は、今後、特に若い層に受け入れられると思う」と、燕三条製品をはじめとする日本製品のマレーシア市場での潜在性を語った。

写真 商品説明を受けるマレーシアのバイヤー(ジェトロ撮影)

商品説明を受けるマレーシアのバイヤー(ジェトロ撮影)

前出のオン社長は「EPAの存在を知らない輸入業者も多い」と指摘しており、製造者側からのEPA活用の提案は、海外販路開拓において商品競争力を高める効果的な方策の1つとして期待できる。

(注)JMEPAは2006年に発効した2国間EPAで、一方の国の原産地基準を満たした製品は、他方の国で輸入関税の減免を受けることができる。なお、日本とマレーシアの貿易においては、JMEPAのほか、日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)も活用できる。

(田中麻理)

(マレーシア)

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