2019年予算案、法人税増税や「グーグル税」創設盛り込む

(スペイン)

マドリード発

2019年02月05日

スペイン政府は1月14日、2019年予算案を下院に提出した。底堅い経済成長見通し(2019年1月28日記事参照)を追い風に、高所得層・大企業に対する課税を増やし、中間所得層・中小企業に恩恵をもたらす「格差是正」予算を打ち出している。

歳入は前年比7.9%増の3,247億ユーロ、歳出は5.1%増の4,727億ユーロを見込み、2,095億ユーロの新規国債発行を予定。国債現存額は過去最高の1兆398億ユーロ、政府債務残高はGDP比95.4%と引き続き高い水準にとどまる。

歳出のうち、一般会計支出(3,454億ユーロ)の57.3%は、年金や失業保険、教育、医療などの社会・福祉分野での支出。年金支出は退職者の増加と支給額の1.6%引き上げにより6.2%増となり、同分野支出の42.1%を占める。また、公務員の給与の引き上げ、介護、住宅、インフラ投資分野の支出増、奨学金や中高年失業給付の復活、ジェンダーに基づく暴力被害者支援などの支出拡大により、一般会計支出は前年より174億ユーロ増え、欧州債務危機以来となる大幅増(5.3%増)になった。

さらに、財政赤字を2018年のGDP比2.7%(目標から0.5ポイント下振れの予測)から、2019年は1.3%まで引き下げる目標となっているため、150億ユーロ規模の赤字削減を、上記の歳出拡大と両立させなければならない。

政府は、この歳出増は堅調な景気による税収の自然増や増税で賄うとしている。具体的には、大企業の法人税の控除制限や最低税率の導入、デジタルサービス税(「グーグル税、注)や金融取引税、ディーゼル燃料税の創設、高所得層の個人所得税率引き上げなどの措置を挙げており(表参照)、税収は前年比9.6%増、また社会保障収入も7.0%増を見込む。

表 2019年予算案の主な増税措置

本予算案は野党との調整が難航し、数カ月間、棚上げされていた。しかし、2018年12月のアンダルシア州選挙で、州の自治権拡大に異を唱える極右政党が躍進。下院でのキャスティングボートを握るカタルーニャ独立主義政党が、予算の不成立を契機とした総選挙前倒しと、それに伴い自治州問題に対して強硬な右派中央政権が誕生する可能性を嫌い、中道左派のサンチェス政権の予算案の支持に回る可能性が出てきたことから、今回の下院提出に至った。しかし、政局は流動的で、成立の見通しは依然不透明であることに変わりはない。

(注)ウェブ広告など特定のデジタルサービスへの課税。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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