2019年のGDP成長率見通しを2.2%に下方修正

(スペイン)

マドリード発

2019年01月28日

経済・企業省は1月11日に発表したマクロ経済予測で、スペインの2019年の実質GDP成長率を2.2%とし、2018年10月発表の前回予測から0.1ポイント下方修正した。2018年第4四半期以降、欧州委員会やIMF、スペイン中央銀行などによる見通しの下方修正が相次いでおり、こうした予測と横並びとなったかたちだ。

外需が不振、個人消費も減速

今回の下方修正は、世界経済(特に主要輸出先のユーロ圏)の減速と米中貿易摩擦を背景にした外需の下振れによるもの(表参照)。GDPへの寄与度は内需の2.2ポイントに対し、外需はマイナス0.1ポイントと、原油高騰による輸入増で純輸出が目減りした前年に引き続き、マイナス寄与が続くと予想される。

表 主要経済指標

内需も、不況期の先送り需要の一巡や低金利による消費ブーム一服で貯蓄率が2018年に過去最低水準に落ち込んだこと、および雇用創出の鈍化により、GDPの6割近くを占める民間最終消費支出の伸びが2018年の2.3%から2019年は1.7%に減速するとみられる。

国内総固定資本形成は、依然として良好な景況感と低金利見通しが続くことから、設備投資で5.0%、建設投資で4.5%と堅調な伸びになると予想される。

雇用面では、失業率が14.0%と1.5ポイントの改善が見込まれるものの、就業者数(フルタイム換算)の伸びが、前年の2.5%から1.8%へと目に見えて鈍化すると予測される。なお、政府は2019年の最低賃金を前年から22.3%引き上げて900ユーロとしており、スペイン中銀や独立財政監視機関(AIReF)は、同措置により4万~15万6,000人の雇用が失われると警告している。

外部リスクは当面、限定的

なお、スペイン中銀は2018年12月14日に発表したマクロ経済見通しの中で、原油価格の低下やユーロ安による経済拡張効果を2019年の好材料として挙げている。また、油価下落によりインフレ率の低下が見込まれる。

一方、当面のリスクとしては、米国の経済金融政策による脆弱(ぜいじゃく)新興国への影響や、英国のEU離脱、イタリア財政懸念の波及といった外部要因を挙げたが、スペインの輸出は今のところ、トランプ政権の保護主義政策の影響をほとんど受けていない、としている。国内のリスクとしては、少数与党政権下での政局混迷による経済政策や財政規律、構造改革の不透明感のほか、カタルーニャ州の政治的緊張の再燃による同州経済への影響を指摘している。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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