中南米進出日系企業調査、ペルーではアジア企業との競合が課題

(ペルー)

米州課

2019年02月14日

ジェトロが2月7日に発表した「2018年度中南米進出日系企業実態調査」において、ペルーでは36社にアンケートを送付し、35社から回答を得た。営業利益面でみると、全体的に「まずまず」といったところだ。具体的には、2018年の営業利益見込みについて、「黒字」との回答割合は約3分の2(67.9%)で前回調査より5.8ポイント減となり、「均衡」との回答割合が10.9ポイント増とほぼ倍増した。一方、「赤字」との回答割合は減少(15.8%→10.7%)しており、「黒字」ないし「均衡」と答えた企業が約9割(89.3%)と、調査対象国では最も高い割合になった。営業利益のDI値(前年比で「改善」と答えた比率から「悪化」と答えた比率を引いた数値)も、32.2ポイントとなり、大きく改善(前回調査は26.3ポイント)した。

他方、2019年の見通しに関しては、DI値は中南米全体の平均値(29.5ポイント)より低い21.4ポイントと慎重だ。2019年の見込みについて「悪化」と答えた企業は、人件費やその他管理費などの支出増加を挙げている。

ペルーが一貫して開放経済政策を採っていることを背景に、進出企業からは例年、「競合相手」「安価な輸入品の競合」がペルーにおける販売・営業面での問題点の1位と2位に挙げられている。今回の調査では、両方とも8~9ポイント程度上昇している(図1参照)。進出企業からは、本来、米国向けに販売されていたはずの財が、行き場をなくしてペルー国内にも一部流れ込んでいるとの指摘もある。

図1 ペルー進出日系企業の販売・営業面の問題点

なお、同業種企業で最も競合関係にある企業の割合をみると、「中国企業」「韓国企業」「その他アジア系企業」の合計割合が調査対象国の中で最も高く、欧米系企業の割合は逆に最も低い(表参照)。

表 同業種間の競合(複数回答)

ペルーは既に、日本、韓国、中国と自由貿易協定(FTA)を締結しており、2018年12月30日の環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の発効を通じ、新たにベトナム、マレーシア、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランドとの間に自由貿易の枠組みができた。本調査時点でCPTPPは未発効だったが、活用意向に関する設問に対しては、ペルーからの輸出において、ベトナム、シンガポール、日本を活用する企業が多い(図2参照)。そして、ペルーへの輸入においては、ベトナム、日本、マレーシアの順に活用する意向が多い(図3参照)。中国や韓国企業との競合が厳しくなる中、CPTPPを活用し、東南アジアの生産拠点や財の調達で活路を見いだそうとしている日本企業の姿が反映されているといえる。

図2 ペルー進出日系企業によるペルーからの輸出の際の利用
図3 ペルー進出日系企業によるペルーへの輸入の際の利用

(竹下幸治郎)

(ペルー)

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