香港の2018年の小売売上高は8.8%増、5年ぶりの高い伸び

(香港)

香港発

2019年02月12日

香港政府統計処は1月30日、2018年通年の小売売上高を発表した。総額は前年比8.8%増の4,852億香港ドル(約6兆7,928億円、1香港ドル=約14円)で、2013年以来5年ぶりの高い伸びとなった(図参照)。

図 小売売上高と前年比伸び率の推移

年末にかけての伸び率は高級品を中心に減速傾向

一方、2018年12月の小売売上高をみると、前年同月比0.1%増の449億ドルと微増だった(表参照)。2018年前半は消費マインドが上向きで、特に中国からの観光客による消費も伸びて2桁成長が5カ月続いたが、7月以降は伸びが減速し、11月と12月は微増にとどまった。

表 2018年小売売上高の前年同月比伸び率

小売形態(取扱商品)別では、薬・化粧品は前年比14.3%増、宝飾品・時計・高級ギフトは13.7%増、百貨店販売は9.6%増となった。ただし、2018年12月は、電化製品など耐久消費財が15.2%減、宝飾品・時計・高級ギフトが4.9%減と落ち込んでいる。

1月31日付の「香港経済日報」によると、香港小売管理協会の謝邱安儀会長は、高額商品の消費について「米中貿易摩擦の解決策が見いだせない中、消費者マインドに影響をもたらしており、短期的には成長が見込めない」としている。また、宝飾品販売のプリンスジュエリー&ウォッチの鄧鉅明会長は「(2018年)12月の売上高は前年同月比で5~6%減だった。高額時計の販売額は40~50%下落している」「(2019年)1月の売り上げも4%減の見込み」と語った。

中国からの観光客は増加も消費への寄与は限定的

香港の消費は、中国からの観光客が支えている。香港観光発展局が1月31日に発表した統計では、2018年の香港への旅客数は前年比11.4%増の6,515万人で過去最高となり、そのうち中国からの旅客数は14.8%増の5,104万人と全体の約8割を占めた。

一方で、中国経済の減速や中国からの日帰り旅客の増加により、今後は消費が伸び悩むとの見方もある。2018年9月に、香港と中国広東省を結ぶ高速鉄道「広深港高速鉄道」、また同年10月には香港と広東省珠海市、マカオを結ぶ「港珠澳大橋」が開通したことによって往来が活発化し、中国からの日帰り旅客は前年比20.1%増となった。こういった旅客層は、高額商品よりも化粧品や薬など日用品の購入が主で、消費への寄与は限定的とされる。

(渕田裕介)

(香港)

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