大統領選挙は第3党の中道右派候補が勝利、今後の対中・対米政策に注目
(エルサルバドル)
米州課
2019年02月04日
2月3日、エルサルバドル大統領選挙と国会議員選挙が実施された。開票率90.83%時点で既に53.68%を獲得している議会第3党「国民統合のための大連合(GANA)」が擁立したナジブ・ブケレ前サンサルバドル市長が勝利宣言を行った。エルサルバドルの憲法では、大統領選挙での勝利条件として過半数獲得票が規定されている。就任日は6月1日で、任期は5年。
獲得票数の2位は、現最大野党・中道右派の「新たな国のための同盟(Alianza por un Nuevo País)」(注)のカルロス・カジェハ氏(31.57%)。現与党・左派の「ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)」のウゴ・マルティネス前外相は13.95%と低い得票率にとどまった。1992年のエルサルバドル内戦の終結後、新自由主義をうたった右派・国民共和同盟(ARENA)が2009年まで、FMLNが2010年以降2019年まで2大政党による議会運営が行われてきたが、今回の総選挙によって議会構図が大きく変化するもようだ。
ブケレ氏は中道右派のGANAから立候補したものの、もともとは左派政党FMLN党員だった(2017年10月離党)。ただし、今回の大統領選挙の公約では、長年の2大政党政治が要因の1つである汚職問題などを訴え、ばらまき政策といった左派的な要素を大々的には掲げていない。ブケレ氏は37歳とエルサルバドル史上最年少の大統領となる。副大統領にはフェリックス・ウジョア氏(元選挙管理最高委員会委員)を指名している。
経済は対米依存
2018年8月20日、エルサルバドルのサルバドール・サンチェス・セレン大統領が台湾との国交断絶と、中国との国交樹立を発表した(2018年8月22日記事参照)。発表に伴う共同声明では、「エルサルバドルは『1つの中国』を承認し、中国との国交を樹立する」とうたわれた。他方、米国は、エルサルバドルの中国との接近や、中米からの不法移民問題などを要因に、不法移民親子を引き離す「ゼロ寛容政策」を進めると公表している。2017年のエルサルバドルの対米輸出比率は全輸出額の約45%で、同年の在米エルサルバドル人からの郷里送金はGDP比20.3%を占めるなど、経済面での依存は非常に大きい。今回の政権交代によって親中政策から再び米国寄りの政策へ転換するか、次期大統領の政権運営に注目が必要だ。
(注)国民共和同盟(ARENA)、国民団結党(PCN)、キリスト教民主党(PDC)、エルサルバドル民主主義の4政党で構成される同盟。
(志賀大祐)
(エルサルバドル)
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